碁石茶の前発酵(カビ付け)を担う糸状菌について、受田の講演記録はAspergillus fumigatusと記すが、小山ほかの単離同定はAspergillus nigerである。この違いは同定手法や採取時期、産地ロットの違いによるものか、それとも一方に誤りがあるのか、原著にあたって確認する必要があるのではないか?
由来: 編集部が立てた問い
仮説は事実主張ではありません。面白さを探索の入口として保存し、これから資料・聞き書き・観察で確かめます。
加工・条件 / process-goishi-cha-fermentation
goishi-cha two-stage fermentation
模式図 — 写真ではなく、根拠をもとに苦味研究所が組んだ説明図

模式図(苦味研究所作成)· CC BY 4.0
碁石茶の二段階発酵 — 好気のカビ付けから、嫌気の漬け込みへ
高知県の後発酵茶「碁石茶」の工程(約 2 時間蒸す、土間に堆積して 7〜10 日間の好気的な前発酵、桶に漬け込んで 10〜20 日間の嫌気的な後発酵、天日で 2〜3 日乾燥)と、rDNA 解析で単離同定された Aspergillus niger・Pichia manshurica・Lactobacillus plantarum、香気寄与度(hexanoic acid が FD 1,024 で最高、furfural・furaneol・ethyl furaneol が FD 512)を並べた図。苦味の測定はこの範囲にはない。
根拠: ev-goishicha-two-stage-process · ev-goishicha-ferment-microbes-2019 · ev-w35b-koyama-fd-values-mechanism
苦味を読む
碁石茶の製造は、原料茶葉を約2時間蒸したのち、土間の筵の上に高さ約50-70cmで堆積させる好気的発酵(カビ付け、前発酵)から始まる。この前発酵は7-10日間続けられ、続いて茶葉を桶に漬け込み重石を載せて10-20日間の嫌気的発酵(後発酵)へ移る。最後に茶葉を裁断し、天日で2-3日間乾燥させて製品とする。この工程解説は査読付き原著論文ではなく講演会記録によるものである。
前発酵(カビ付け)を担う菌種については、資料間で報告が一致しない。受田(2015)の講演会記録はAspergillus fumigatusを主体と記すが、rDNA解析による単離同定を行った2019年の研究はAspergillus nigerを報告しており、同定手法や採取時期の違いによるものかは未確認のまま、両論として扱う必要がある。同じ2019年の研究は、後発酵に関わる菌としてPichia manshuricaとLactobacillus plantarumも単離同定している。
単離された3菌種はそれぞれ異なる香気成分の生成に関与すると報告されている。A. nigerはエチルフラネオール及びチアゾリン化合物、P. manshuricaはエステル類・アルコール類・フェノール類(4-エチルフェノール、4-エチル-2-メトキシフェノールを含む)、L. plantarumはヘキサン酸・ブタン酸などの有機酸及びラクトンの生成に、それぞれ関与するとされる。
同じ2019年の研究は、香気寄与度を示すFDファクターも定量している。最も高いのはfermented臭のhexanoic acidでFD=1,024、次いでalmond臭のfurfural、caramel臭のfuraneol、sweet burnt臭のethyl furaneolがFD=512で続く。さらに、A. nigerが特徴香気成分ethyl furaneolを生成する仕組みとして、NCBI BLAST相同性検索でZygosaccharomyces rouxii由来のエノンオキシダーゼと40.3%の相同性を示す分泌タンパク質を同菌が持つことも確認されており、菌種の同定にとどまらず生成機構の推定にまで踏み込んでいる。
この本文で確認した範囲: 蒸し・前発酵・後発酵・天日乾燥の各工程の時間と規模の数値を確認した
後発酵茶・碁石茶の特徴香気成分とその生成に関与する微生物の解析
この本文で確認した範囲: 前発酵の主体菌種が受田(2015)と単離同定の間で食い違う点を確認した/単離された3菌種それぞれが生成に関与する香気化合物群を確認した/FDファクターの定量値とA. nigerによるethyl furaneol生成機構の相同性検索結果を確認した
碁石茶の前発酵(カビ付け)を担う糸状菌について、受田の講演記録はAspergillus fumigatusと記すが、小山ほかの単離同定はAspergillus nigerである。この違いは同定手法や採取時期、産地ロットの違いによるものか、それとも一方に誤りがあるのか、原著にあたって確認する必要があるのではないか?
由来: 編集部が立てた問い
仮説は事実主張ではありません。面白さを探索の入口として保存し、これから資料・聞き書き・観察で確かめます。
構造化された主張 — 節を開くと、主張ごとの確度・根拠・限界が読めます
範囲: 高知県大豊町の碁石茶
注記: 受田(2015)による工程解説。査読付き原著論文ではなく講演会記録だが、地域連携研究者による整理として収載。
process-goishi-cha-fermentation —is_prepared_by→ "原料茶葉を約2時間蒸したのち、土間の筵の上に高さ約50-70cmで堆積させ7-10日間の好気的発酵(カビ付け、前発酵)を行う。続けて茶葉を桶に漬け込み重石を載せて10-20日間の嫌気的発酵(後発酵)を行い、裁断後に天日で2-3日間乾燥させて製品とする。"範囲: 碁石茶(産地不特定の試料)のGC-O/AEDAによる香気成分分析と単離菌の同定
注記: 抄録のみ確認。受田(2015)の講演会記録は前発酵(カビ付け)の主体をAspergillus fumigatusと記すが、小山ほか(2019)の単離同定はAspergillus nigerであり、報告菌種が資料間で一致しない。本entryは単離同定を行った小山ほか(2019)を採用し、不一致の存在を明記する。同定手法・採取時期の違いによるものかは未確認。
process-goishi-cha-fermentation —is_prepared_by→ "rDNA解析による単離同定で、碁石茶の発酵に関わる微生物としてAspergillus niger、Pichia manshurica、Lactobacillus plantarumの3種が報告されている。A. nigerはエチルフラネオール及びチアゾリン化合物、P. manshuricaはエステル類・アルコール類・フェノール類(4-エチルフェノール、4-エチル-2-メトキシフェノールを含む)、L. plantarumはヘキサン酸・ブタン酸などの有機酸及びラクトンの生成にそれぞれ関与すると報告されている。"