グアヤコール

化合物 / compound-guaiacol

guaiacol / 2-methoxyphenol

模式図 — 写真ではなく、根拠をもとに苦味研究所が組んだ説明図

左右二枚の札。左は「香り」の札で、鰹節の同定と定量、用語集の評価属性、bitter のスコアが無いことの三行。右は「苦味との関係」の札で、受容体の活性化を弱めた報告、細胞系の限界、香ばしいは苦味ではないという注記の三行。下に「香りの資料は苦味を語らない」の帯。

模式図(苦味研究所作成)· CC BY 4.0

グアヤコール — 燻煙の香りの成分で、苦味の資料は「語らない」か「弱める」

燻煙由来のフェノール化合物グアヤコールについて、鰹節の香気希釈分析で上位 10 成分の一つ(FD 因子 15625、濃度 9.12 ppm)と同定されたこと、燻製フレーバーの用語集が 19 種のフェノール類を 11 のアロマ属性で 15 点尺度評価し苦味を測っていないこと、原案の 14 用語に bitter が含まれながら 34 種の組み合わせの評価表に bitter のスコアがないこと、松煙で萎凋させる前の茶の抽出物による TAS2R14 の活性化を細胞内カルシウム信号で 37% 低下させたことを並べた図。香りの資料は苦味の証拠にしない。

根拠: ev-guaiacol-katsuobushi-saito · ev-smoke-lexicon-wang2018a · ev-smoke-lexicon-wang2018b · ev-guaiacol-tas2r14-antagonism-su2026

このページの内容(7 節)
  1. 説明
  2. この説明の根拠(4)
  3. 関連をたどる
  4. 仮説採集箱(1)
  5. 組成・含有(1)
  6. 感覚(1)
  7. 機構・受容体(1)

苦味を読む

グアヤコール(2-メトキシフェノール)は、木材リグニンの熱分解で生じる燻煙由来のフェノール化合物で、多くの燻製食品の香気を特徴づける成分として知られる。鰹節荒節の香気成分を分析した研究では、香気寄与度上位10成分の一つとしてグアヤコールが同定され、香気寄与の指標であるFD(希釈)因子15625・濃度9.12ppmという値が示された。同じ抽出物中で濃度が最も高いシリンゴール(256ppm、FD因子3125)よりも寄与度で上回っており、香りの『濃さ』と『効き方』は必ずしも一致しない。ただしこの評価はGC-MS/オルファクトメトリーと料理人によるオルトネーザル官能評価にとどまり、味覚としての苦味への言及・測定は原論文に見当たらない。

グアヤコールを含む燻香系フェノール化合物19種を対象に、高度訓練パネルがsmoky・ashy・woody・burnt等11種のアロマ属性で香気強度を評価した研究がある。この評価はフレグランスストリップを用いたオルファクトメトリー、つまり嗅覚のみで行われ、苦味を含む味覚属性は測定対象に含まれていない。関連する別の論文は、燻製の風味を表す原14用語の中にbitter(苦味)・metallic・sourが含まれると明記しながら、実際の34種の二成分組合せ評価表にはbitterのスコアが一度も記載されていない。『燻香=苦味』とはただちに結びつけられない、という文献上の重要な観察である。

むしろグアヤコールは、苦味を抑制する側の候補として報告された例がある。松煙で萎凋する製法の紅茶「正山小種」を対象にした2026年の研究(抄録段階)は、萎凋前の茶抽出物が引き起こす苦味受容体TAS2R14の活性化を、グアヤコールが細胞内カルシウムシグナルを37%低下させる形で拮抗阻害したと報告する。量子化学計算では水素結合とファンデルワールス力による相互作用が示唆されているという。ただし単一研究・抄録段階の情報であり、細胞レベルのアッセイという性質上、ヒトの官能評価への外挿は直接的ではない点に注意が必要である。

この説明の根拠

  1. Aroma Compounds Contributing to Dried Bonito(かつお節の香りに寄与する重要香気成分)

    斉藤司; 椎橋裕子; 明賀博樹; 原口賢治; 増田唯; 黒林淑子; 南木昂; 山崎英恵; 中村元計; 伏木亨 / 2014 / 学術論文 / 全文確認

    この本文で確認した範囲: 鰹節香気寄与度分析の数値を、この段落1の根拠として使用した

  2. Sensory Characteristics of Various Concentrations of Phenolic Compounds Potentially Associated with Smoked Aroma in Foods

    Wang H; Chambers E IV / 2018 / 学術論文 / 全文確認

    この本文で確認した範囲: アロマ属性評価が嗅覚限定である点を、この段落2の根拠として使用した

  3. Sensory Characteristics of Combinations of Phenolic Compounds Potentially Associated with Smoked Aroma in Foods

    Wang H; Chambers E IV; Kan J / 2018 / 学術論文 / 全文確認

    この本文で確認した範囲: bitterが尺度に含まれない事実を、この段落2の根拠として使用した

  4. Role of smoke withering process in the bitterness amelioration effect on smoked Lapsang Souchong tea

    Su W; Ni L; Wang D; Lu Y; Liu W; Feng X; Liu Y; Liu Z / 2026 / 学術論文 / 抄録確認

    この本文で確認した範囲: TAS2R14拮抗阻害の抄録内容を、この段落3の根拠として使用した

関連をたどる

鰹節 →含む→ グアヤコール

グアヤコール →拮抗阻害する→ TAS2R14

仮説採集箱(1)

燻煙フェノール類は苦味を強めるのか弱めるのか?編集仮説

ワインの燻煙汚染ではフェノール類の配糖体が苦味と相関する一方、正山小種の松煙萎凋工程はグアヤコールなどの同じ系統の化合物が苦味を弱める方向に働くとする報告がある。燻煙由来のフェノール類は、食品の種類やもとの苦味成分との組み合わせによって、苦味を強める方向にも弱める方向にも働く、技法族と呼べる何かをなしているのだろうか?

由来: 編集部が立てた問い

注記: 候補群を眺める中で生まれた編集仮説。誰かの伝承としては扱わない。

仮説は事実主張ではありません。面白さを探索の入口として保存し、これから資料・聞き書き・観察で確かめます。

仮説採集箱をすべて見る →

構造化された主張 — 節を開くと、主張ごとの確度・根拠・限界が読めます

組成・含有(1)

鰹節グアヤコールを含む支持あり

範囲: 鰹節荒節の超臨界二酸化炭素抽出物(AEDA法で香気寄与度上位10成分を選定)

注記: グアヤコール(2-メトキシフェノール)はFD(Flavor Dilution)因子15625・濃度9.12ppmで、香気寄与度が最も高い成分として同定された。同じ抽出物中でシリンゴール(2,6-ジメトキシフェノール)は256ppmと濃度は最高だがFD因子は3125で、香気の「強さ(濃度)」と「寄与度(希釈感度)」が一致しない例。評価はGC-MS/オルファクトメトリーおよび料理人によるオルトネーザル官能評価であり、いずれも香り(匂い)の評価にとどまる。苦味など味覚特性への言及・測定は原文中に見当たらない。

AEDA法(香気希釈分析)により選定した香気寄与度上位10成分の1つとしてグアヤコールを同定・定量した(FD因子15625、濃度9.12ppm)。
限界: 香気(嗅覚)成分の同定・定量にとどまり、味覚(苦味を含む)の測定・言及は行われていない。
出典: Aroma Compounds Contributing to Dried Bonito(かつお節の香りに寄与する重要香気成分)(斉藤司; 椎橋裕子; 明賀博樹; 原口賢治; 増田唯; 黒林淑子; 南木昂; 山崎英恵; 中村元計; 伏木亨, 2014)・全文確認
データを表示ingredient-katsuobushi —contains→ compound-guaiacol
claim: clm-guaiacol-katsuobushi-composition / type: composition / 更新: 2026-09-02

感覚(1)

グアヤコールは次を持つと記録されている: smoky, ashy, woody, musty/dusty, musty/earthy, burnt, acrid, pungent, petroleum-like, creosote/tar, cedar という11種のアロマ属性で特徴づけられた香気プロファイル(1〜100,000ppmの濃度域、15点強度尺度)観察結果

範囲: グアヤコール・シリンゴールを含む燻香系フェノール・グアヤコール・シリンゴール誘導体19種を対象とした、高度訓練パネルによる単体および二成分組合せの香気強度評価(2件の研究)

注記: Jaffeらが提案した燻製フレーバーの原14用語にはbitter(苦味)・metallic・sourも含まれると2つ目の論文が明記するが、実際の評価表(各論文の表1-5)に苦味スコアは一度も現れない。評価はすべて匂いを嗅ぐ(フレグランスストリップ/オルファクトメトリー)方式で行われており、味覚(飲食による口中評価)は実施されていない。「燻香=苦味」を暗黙に想定しないための重要な文献上の観察。

グアヤコール・シリンゴールを含む19種のフェノール・グアヤコール・シリンゴール誘導体を、smoky・ashy・woody等11種のアロマ属性で15点強度尺度評価した。苦味(taste)属性は測定対象に含まれない。
限界: 味覚(口に含む)評価は一切行われていない。
燻製フレーバーの原14用語(smoky, ashy, woody, musty/dusty, musty/earthy, burnt, acrid, pungent, petroleum-like, creosote/tar, cedar, bitter, metallic, sour)にbitterが含まれると明記しながら、実際の34種の二成分組合せ評価表にbitterのスコアは一切記載されていない。
限界: 原14用語のうちbitter・metallic・sourは本研究の測定尺度から外れている。
データを表示compound-guaiacol —is_documented_as_having→ "smoky, ashy, woody, musty/dusty, musty/earthy, burnt, acrid, pungent, petroleum-like, creosote/tar, cedar という11種のアロマ属性で特徴づけられた香気プロファイル(1〜100,000ppmの濃度域、15点強度尺度)"
claim: clm-wang-smoke-phenol-lexicon-aroma-only / type: sensory / 更新: 2026-09-02

機構・受容体(1)

グアヤコールTAS2R14を拮抗阻害する予備的

範囲: 松煙萎凋前の正山小種抽出物によるTAS2R14活性化を指標とした細胞ベースアッセイ

注記: グアヤコールは松煙萎凋前の茶抽出物によるTAS2R14活性化を、細胞内カルシウムシグナルを37%低下させる形で拮抗阻害したと報告されている。量子化学計算では水素結合とファンデルワールス力による非共有結合的相互作用が示唆されている。単一研究・抄録段階の情報であり、全文は未確認。

松煙萎凋前の茶抽出物によるTAS2R14活性化を、グアヤコールが細胞内カルシウムシグナルを37%低下させる形で拮抗阻害したと報告されている。
限界: 抄録段階の情報。細胞系アッセイでありヒト官能への外挿は直接的ではない。
出典: Role of smoke withering process in the bitterness amelioration effect on smoked Lapsang Souchong tea(Su W; Ni L; Wang D; Lu Y; Liu W; Feng X; Liu Y; Liu Z, 2026)・抄録確認
データを表示compound-guaiacol —antagonizes→ receptor-tas2r14
claim: clm-guaiacol-antagonizes-tas2r14-lapsang / type: mechanism / 更新: 2026-09-02

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