ビターオレンジで報告される『幼果でピーク後に成熟に向け急減する』非単調な推移のように、八朔・甘夏・河内晩柑・晩白柚でも発達段階ごとのナリンギン・リモニン・ノミリンの推移を追った一次資料はあるのだろうか?
由来: 編集部が立てた問い
注記: 熊本県産業技術センターの資料は成熟果の品種間比較のみで、同一系統内の発達段階を追った時系列データではない。候補群を眺める中で生まれた編集仮説。
仮説は事実主張ではありません。面白さを探索の入口として保存し、これから資料・聞き書き・観察で確かめます。
食材
甘夏は、大分県津久見市で夏みかん(夏橙)の枝変わりとして選抜された品種(正式品種名は川野夏橙)。ナリンギン・リモニンを多く含む「苦味系」柑橘として熊本県の比較分析対象になった。
食材 / ingredient-amanatsu
↑苦味を読む
甘夏(正式な品種名は川野夏橙)は、大分県津久見市上青江の川野豊の夏柑園で、夏みかん(夏橙)の枝変わり(芽条変異)として昭和の初めに発見された柑橘である。普通の夏橙に比べてクエン酸の減少が早く、3月上旬から食べ頃になるとされる。他資料が挙げる1935年発見・1950年登録という具体的な年は、大分県の公式資料そのものでは確認できていない。
甘夏が苦味との関わりで注目されるのは、熊本県産業技術センターが2005〜2007年度に行った県産カンキツ8品種の苦味成分調査で、甘夏(川野夏ダイダイ)が大橘・河内晩柑・晩白柚とともに、果汁・果皮にナリンギン・リモニンを多く含む『苦味系』に分類されたことにある。一方、温州ミカン・ポンカン・不知火・スイートスプリングはナリルチン・ヘスペリジンを中心とする『非苦味系』とされた。
同じ調査の詳細部では、果汁中の苦味性リモニン類が名指しされているのはポンカン・晩白柚・スイートスプリングであり、甘夏の果汁での明示的な記載は本文になかった。果皮のリモニンについては温州ミカンを除く7品種すべてに含まれるとされ、ノミリンは河内晩柑の果皮のみで検出された。要約の分類と詳細部の記述が一致しない箇所があり、両方をそのまま書き留めておく必要がある。
なお同じ調査は、加熱処理による苦味成分の含量変化はなかったと報告する一方、加熱時に生じる臭いの強さは8品種中、温州ミカンで最も強く、甘夏で最も弱かったとも記す。この加熱臭の強弱は嗅覚についての報告であり、苦味の強さの報告とは別のものとして区別する必要がある。公開されている情報は分類の有無が中心で、ナリンギン・リモニンの具体的な含有量そのものは確認できていない。
この本文で確認した範囲: 枝変わりとしての発見経緯を確認
この本文で確認した範囲: 苦味系4品種への分類とその根拠を確認/要約と詳細部でリモニン記述が食い違う点を確認/加熱による香りと苦味成分の区別
別名: 川野夏橙(ja)、amanatsu (Citrus natsudaidai)(en)
ビターオレンジで報告される『幼果でピーク後に成熟に向け急減する』非単調な推移のように、八朔・甘夏・河内晩柑・晩白柚でも発達段階ごとのナリンギン・リモニン・ノミリンの推移を追った一次資料はあるのだろうか?
由来: 編集部が立てた問い
注記: 熊本県産業技術センターの資料は成熟果の品種間比較のみで、同一系統内の発達段階を追った時系列データではない。候補群を眺める中で生まれた編集仮説。
仮説は事実主張ではありません。面白さを探索の入口として保存し、これから資料・聞き書き・観察で確かめます。
構造化された主張 — 節を開くと、主張ごとの確度・根拠・限界が読めます
範囲: 大分県公式資料の記述
注記: 昭和の初め、大分県津久見市上青江の川野豊の夏柑園で、夏みかん(夏橙)の枝変わり(芽条変異)として発見された。夏橙に比べてクエン酸の減少が早く、3月上旬から食べ頃になる。他資料が挙げる『1935年発見・1950年『川野夏橙』登録』という具体年は大分県公式資料そのものでは確認できなかった。
ingredient-amanatsu —is_derived_from→ ingredient-natsumikan範囲: 熊本県産業技術センター2005~2007年度研究、8品種比較
ingredient-amanatsu —contains→ compound-naringin範囲: 熊本県産業技術センター2005~2007年度研究、8品種比較
注記: 資料自身の要約と詳細部で品種の列挙が一致していないため、両方をそのまま記録した。
ingredient-amanatsu —contains→ compound-limonin範囲: 川野系ナツダイダイの果肉(砂じょう)・じょうのう・果皮のナリンギンを、完全磨砕後に水で抽出した分と、磨砕後加熱して全量を出した分で比べた
注記: 夏みかんのナリンギンの40〜70%が不溶型・結合型で、加熱で可溶化するという従来の説明(中林の説。津坂1965が引用)とは異なる結果である。別所ほか・真部ほか(1964、夏みかん)も、磨砕だけで加熱後の90%以上が溶け出し、不溶型・結合型は一部とした。
ingredient-amanatsu —has_composition→ compound-naringin範囲: 川野系ナツダイダイの生果と凍結果(種々の程度に苦い果肉)。パネル12名が「通常・はっきり苦い・極めて苦い(食用に適さない)」で果肉を判定し、圧搾果汁のナリンギン(改変Davis法)と対応させた
注記: パネルは12名で、著者も少ないと断っている。図4から読むと、ナリンギン約20 mg%の試料は12名全員が「通常」、約28 mg%は10名が通常・2名がはっきり苦い、約45〜50 mg%の試料は8〜7名がはっきり苦い、約70 mg%は12名全員が極めて苦いと判定した(図の目読みで、横軸の値は概数)。果実そのものの苦味と圧搾果汁のナリンギンの対応で、ナリンギン濃度の閾値を示す実験ではない。
ingredient-amanatsu —has_sensory_response→ "川野系ナツダイダイの果肉を手動の搾汁器で圧搾した果汁のナリンギン量と果肉の苦味の官能検査は比較的よく一致し、50 mg%(mg%=100 g あたりの mg)前後ではっきり苦味を感じる(商品として認められる限界)、63 mg%以上になると食用として適さないとする人が多かった。生果の平均は約24 mg%(通常の苦味)、強く苦い凍結果は約74 mg%であった。"範囲: 川野系ナツダイダイ(17年生の1樹、1月13日に採取して4℃で保存した生果と凍結果)の果肉。生果と凍結果の果肉を完全磨砕・圧搾・抽出で調製した果汁のナリンギン(改変Davis法)と、12名のパネルによる果肉の苦味の官能検査を比べた
注記: 苦味を官能で測り、ナリンギンと突き合わせた実験である。凍結の影響を調べた研究で、薄皮(じょうのう膜)をむいた果肉や調理の影響を調べたものではない。「かむと膜から出る」は著者の解釈で、膜からの溶出を直接測った実験ではない(砂じょうを水洗した凍結果の砂じょうも全員が苦く食べられないと判定した、というデータが解釈を支える)。本報の試料は川野系(甘夏にあたる)であり、はっさく・夏みかんに同じとはいえない。緒言は、ナツダイダイ・ハッサクが冬の寒害で苦味を生じることを述べる。
ingredient-amanatsu —has_perceived_bitterness_affected_by→ "川野系ナツダイダイ(甘夏)の果肉の苦味の強さは、果肉を完全にすりつぶして出るナリンギンの総量とは対応せず、手搾り(圧搾)で出るナリンギンの量と対応した。生果と凍結果の完全磨砕のナリンギンは67.3・69.9 mg%(mg%=100 g あたりの mg)でほぼ同じだったが、圧搾では生果23.7・凍結果73.0 mg%と大きく違い、苦味は生果が通常、凍結果が「極めて苦い」であった。著者は、苦味を決めるのは歯でかんだときに出るナリンギンで、生果ではナリンギンを多く含むじょうのう膜(とくに砂じょうの柄)からの溶出が少ないが、凍結で膜がもろくなると膜から多量に溶け出して強い苦味になる、と考えた。"