清酒

食材 / ingredient-sake

sake (清酒/日本酒)

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透明なカップに注がれた淡い黄色の生酒

長野県産の生酒(無濾過・非加熱処理の日本酒)をカップに注いだ写真。液体そのものが被写体で、酒器や醸造設備そのものを主題とする写真ではない。

写っているもの: 該当分類群なし(生酒、カップに注いだ状態)部位・状態: 生酒(無濾過・非加熱処理の日本酒)をカップに注いだ液体そのもの

写真: SycedCC0 1.0原画像台帳の原画像

写真の範囲と来歴

被写体の確認: 原典の記載による同定。原典は長野県産の生酒と記載。具体的な酒蔵・銘柄名の記載はない。

掲載画像: Wikimedia Commons の原寸ファイルを取得後、苦味研究所にて sips で長辺2400px程度に縮小。切り抜き・色調変更なし。 表示用には幅1200px上限のWebPを配信し、台帳の原画像は上のリンクから確認できます。

このページの内容(8 節)
  1. 説明
  2. この説明の根拠(4)
  3. 別名
  4. 関連をたどる
  5. 組成・含有(1)
  6. 感覚(4)
  7. 加工・調理でどう変わる(1)
  8. 文化(2)

苦味を読む

清酒は米・米麹・水を主原料とし、麹菌(Aspergillus oryzae)による米デンプンの糖化と清酒酵母によるアルコール発酵を同時に進める並行複発酵で造られる。この過程で、蒸米タンパク質のうちグルテリンという貯蔵タンパク質の酸性サブユニットが麹菌由来の酵素によって消化され、N末端にピログルタミル基(グルタミンの側鎖が環化してできる構造)を持つ特徴的な短いペプチド(アミノ酸が数個つながった断片)が生じる。2008年の解説は、市販純米酒から単離したこの種のペプチド標品を検討し、清酒の呈味に関与している可能性を示した。

清酒の苦味は、ペプチドだけでなく遊離のアミノ酸によっても生じるとされる。純合成清酒(エタノール・糖・有機酸などを配合した模擬清酒)に市販清酒中濃度の10倍にあたる1500ppmのアルギニンを添加した識別試験では、25回の判定中23回で添加区が正しく識別され(有意水準0.1%)、嗜好試験でも「苦味,甘味」の指摘が多く、望ましくないアミノ酸と判定された。2015年の総説も、日本酒特有の苦みはバリン・イソロイシン・ロイシン・プロリン・アルギニンに由来するとまとめている。ただしアルギニンの試験は天然の10倍という高濃度条件であり、通常濃度でどの程度寄与するかを示すものではない。

清酒の官能評価では、酒類総合研究所が業界団体の協力を得てまとめた用語体系があり、「苦味」という用語には標準見本としてチロソール(フェノール性の化合物)が充てられ、弁別できる濃度(検知閾値)1.4g/l、標準として添加する濃度4.9g/l、清酒中の実際の含有量は70-90mg/lとされる。2008年の解説が単離した苦味ペプチドは「大変強い苦味」で「不快感が後に長く残る」と評価されており、チロソールのような単一化合物の標準とは別に、ペプチド由来の強い苦味も記録されている。

火入れ(加熱殺菌)をした清酒を貯蔵すると、用語体系の変化表では味の「苦味」と「刺激味(なめらか)」が増加し、「渋味」と「刺激味(あらい)」が減少するとされる。生酒(火入れ前)の項目には苦味の増減の記載がなく、貯蔵に伴う苦味の挙動は火入れの有無で書き分けられている。こうした背景もあり、酒質を淡麗にする吟醸タイプ清酒の増加という業界動向の中で、低タンパク質の原料米を求める傾向があると2008年の解説は説明している。

この説明の根拠

  1. 原料米タンパク質に由来する清酒の苦味ペプチド (Bitter-Tasting Sake Peptides Derived from the Rice Protein)

    Hashizume K / 2008 / レビュー論文 / 全文確認

    この本文で確認した範囲: グルテリン酸性サブユニットの消化による苦味ペプチド生成を確認した/単離標品の強い苦味と不快な後味の記述を確認した/淡麗化・吟醸増加による低タンパク米需要の背景説明を確認した

  2. 清酒の呈味性に影響を及ぼすアミノ酸の探索 (Search for amino acids affecting the taste of Japanese sake)

    Iwano K; Takahashi K; Ito T; Nakazawa N / 2004 / 学術論文 / 全文確認

    この本文で確認した範囲: アルギニン1500ppm添加区の23/25正解と苦味指摘を確認した

  3. 日本酒の成分と香味 (Components and flavor of Japanese sake)

    Ogawa H / 2015 / レビュー論文 / 全文確認

    この本文で確認した範囲: 5種アミノ酸由来とする総説の記述を確認した

  4. 清酒の官能評価分析における香味に関する品質評価用語及び標準見本 (Flavor Terminology and Reference Standards for Sensory Analysis of Sake)

    Utsunomiya H; Isogai A; Iwata H; Nakano S / 2006 / 公的資料 / 全文確認

    この本文で確認した範囲: 苦味の標準見本チロソールと閾値数値を確認した/火入れ酒の貯蔵に伴う苦味増加の変化表記述を確認した

別名: 日本酒(ja)、sake(en)

関連をたどる

清酒 →苦味を生む要因→ 原料米タンパク質に由来する清酒の苦味ペプチド

清酒 →正の官能属性→ 苦味ペプチド

清酒 →知覚苦味と関連する要因→ L-アルギニン

構造化された主張 — 節を開くと、主張ごとの確度・根拠・限界が読めます

組成・含有(1)

清酒の苦味を生む要因: 原料米タンパク質に由来する清酒の苦味ペプチド支持あり

範囲: 蒸米(コメ)タンパク質のグルテリン酸性サブユニットが清酒醪中で麹菌由来酵素により消化され,N末端側にピログルタミル基を持つ特徴的なオリゴペプチド(苦味ペプチド)が生成し,清酒の呈味に関与している可能性が示された。

注記: 橋爪克己(2008)による解説。原料米変異体4系統(esp1-4)とその親株(日本晴・山田錦)を用いた蒸米消化試験、および市販純米酒から単離した苦味ペプチド標品の分子構造解析・官能評価に基づく。

蒸米タンパク質が清酒醪中で麹菌の酵素によって消化され,グルテリンの酸性サブユニットのN末端側から特徴的な構造を持つ苦味ペプチドが生成し,清酒の呈味に関与している可能性が示された。
限界: 蒸米消化試験は模擬的な酵素消化系であり、実際の清酒醪の複雑な発酵環境を完全に再現するものではない。
文脈: 消化試験に供した精製PB標品を同酵素で長時間消化した後に凍結乾燥し,15%エチルアルコールに溶解して味をみたところ,大変強い苦味が感じられた。この苦味は不快感が後に長く残るものであったため,ペプチドに由来するのではないかと考え検索を行った。
限界: 定量的な官能パネル評価ではなく、研究の端緒となった定性的な観察の記述。
データを表示ingredient-sake —has_bitterness_generated_by→ compound-class-sake-glutelin-peptides
claim: clm-sake-bitterness-from-glutelin-peptides / type: composition / 更新: 2026-09-01

感覚(4)

清酒の正の官能属性: 苦味ペプチド文脈資料

範囲: 清酒のペプチドについては,官能的に良好な寄与をすると報告されている(先行研究の紹介)。

文脈: 清酒のペプチドについては,官能的に良好な寄与をすると報告されており15),最近は生理機能をもつものも注目されている16)。
限界: 引用元(文献15)を直接確認していない。橋爪(2008)自身が単離した苦味ペプチドの評価(強い苦味・不快な後味)とは対象ペプチドが異なる可能性がある。
データを表示ingredient-sake —has_positive_sensory_attributes→ compound-class-bitter-peptides
claim: clm-sake-peptides-reported-positive-elsewhere / type: sensory / 更新: 2026-09-01
清酒の知覚苦味と関連する要因: L-アルギニン支持あり

範囲: 純合成清酒(20%エタノール、グルコース、コハク酸、乳酸、NaCl、KH2PO4、イソアミルアルコール、酢酸イソアミル、カプロン酸エチルを配合)に市販清酒中アミノ酸濃度の10倍(1500ppm)のアルギニンを添加した3点識別試験で23/25正解(有意水準0.1%)。3点嗜好試験ではアルギニン添加区は『苦味,甘味』の指摘が多く,有意水準0.1%で官能的に望ましくないアミノ酸と判定された。

注記: 岩野ほか(2004)。パネルは教官3名・卒論生2名の計5名×5反復=25回判定という小規模・未訓練パネル。天然清酒中濃度の10倍という高濃度条件での検討であり、通常濃度での寄与の大きさを示すものではない。英語要旨は『Arginine was judged as the amino acid causing bitterness』と明記。

アルギニン1500ppm(市販清酒中濃度の10倍)添加区は3点識別試験で23/25正解(0.1%水準で有意)。3点嗜好試験でアルギニンは『苦味,甘味』の指摘回数が多く、有意水準0.1%で望ましくないアミノ酸と判定された。英語要旨:Arginine was judged as the amino acid causing bitterness。
限界: 天然清酒中濃度の10倍という高濃度条件。パネルは訓練を受けていない少人数の学生・教官中心。
データを表示ingredient-sake —has_perceived_bitterness_associated_with→ compound-arginine
claim: clm-arginine-bitter-in-synthetic-sake / type: sensory / 更新: 2026-09-01
清酒の苦味の帰属先: バリン,イソロイシン,ロイシン,プロリン,アルギニン文脈資料

範囲: 『日本酒の独特の苦みは,バリン,イソロイシン,ロイシン,プロリン,アルギニン由来であるとされる』との総説記述。

注記: 小川(2015)総説p.336の記述。明示的な引用番号を伴わない一般的整理として提示されており、個別の定量・官能データはこの文献内には無い。

文脈: 日本酒の独特の苦みは,バリン,イソロイシン,ロイシン,プロリン,アルギニン由来であるとされる。
限界: 引用番号のない一般的記述で、個別の定量・官能試験データは本総説内に無い。
データを表示ingredient-sake —has_bitterness_attributed_to→ "バリン,イソロイシン,ロイシン,プロリン,アルギニン"
claim: clm-sake-bitterness-attributed-to-amino-acids-review / type: sensory / 更新: 2026-09-01
清酒宇都宮ほか(2006)の清酒香味品質評価用語体系(酒類総合研究所が日本酒造組合中央会・灘酒研究会・伏見醸友会の協力を得て取りまとめ)に標準用語として収載されている支持あり

範囲: 用語体系のクラス『13.苦味』/用語『苦味』は定義『苦い』とされ,標準見本にチロソール(2-(4-Hydroxyphenyl)ethyl alcohol, TCI 98%+)を充てる。弁別閾値(検知)1.4g/l,標準添加量4.9g/l,清酒中の含有量70-90mg/l。

用語『苦味』(定義:苦い)の標準見本はチロソール(TCI 98%+)。弁別閾値(検知)1.4g/l、標準添加量4.9g/l、清酒中の含有量70-90mg/l。
データを表示ingredient-sake —has_standardized_vocabulary_entry_in→ "宇都宮ほか(2006)の清酒香味品質評価用語体系(酒類総合研究所が日本酒造組合中央会・灘酒研究会・伏見醸友会の協力を得て取りまとめ)"
claim: clm-sake-bitterness-standardized-vocabulary / type: sensory / 更新: 2026-09-01

加工・調理でどう変わる(1)

清酒の知覚苦味に影響する要因: 増加:火入れ(加熱殺菌)した清酒の貯蔵支持あり

範囲: 宇都宮ほか(2006)第4表(清酒の貯蔵に伴う香味変化を表す評価用語)により,火入れした清酒では貯蔵に伴い味『苦味,刺激味(なめらか)』が増加し,『渋味,刺激味(あらい)』が減少するとされる。同表の生酒(火入れ前)の項目には苦味の増減は記載されていない。

注記: 老香・生老香を除く貯蔵香味変化表(第4表)に基づく。生酒と火入れ酒とで貯蔵に伴う苦味の挙動が書き分けられている点に注意。

火入れした清酒の貯蔵に伴う味の変化:増加=苦味,刺激味(なめらか)/減少=渋味,刺激味(あらい)。生酒の項目には苦味の記載なし(増加=甘味,刺激味(なめらか),うま味,濃淡(濃い)/減少=渋味,刺激味(あらい),あと味(きれ))。
データを表示ingredient-sake —has_perceived_bitterness_affected_by→ "増加:火入れ(加熱殺菌)した清酒の貯蔵"
claim: clm-sake-pasteurized-storage-bitterness-increase / type: processing / 更新: 2026-09-01

文化(2)

清酒低タンパク質の原料米を求める業界動向(酒質の淡麗化・吟醸タイプ清酒の増加)と関連する文脈資料

範囲: 『低タンパク質質の原料米が求められる背景には,酒質の淡麗化や吟醸タイプ清酒の増加があると考えられる』との研究動機の説明。

注記: 橋爪(2008)はじめに(p.574)の記述。著者による業界動向の背景説明であり、言説的整理として扱う(数値的な検証は本文中に無い)。

文脈: 低タンパク質質の原料米が求められる背景には,酒質の淡麗化や吟醸タイプ清酒の増加があると考えられる。清酒醸造では低タンパク質の原料米を求める指標の一つとして低タンパク質米が重視されている。
限界: 業界動向の一般的説明であり、本文中に定量的な裏付けはない。
データを表示ingredient-sake —is_associated_with→ "低タンパク質の原料米を求める業界動向(酒質の淡麗化・吟醸タイプ清酒の増加)"
claim: clm-sake-low-protein-rice-demand-context / type: cultural / 更新: 2026-09-01
清酒淡麗辛口嗜好(近年の香り高く味が淡い嗜好)と関連する文脈資料

範囲: 『近年の香り高く味が淡い嗜好,いわゆる淡麗辛口嗜好からの吟醸酒の注目度が増している。まさに“米白ければ酒にくせなし”である。』

注記: 小川(2015)総説p.331による言説的整理。『くせ』は苦味や雑味を名指ししたものではなく,精米歩合と味の淡さ一般を結び付けた慣用句として引用されている点に注意。苦味を直接語る言説ではないため,関連文脈として弱い接続にとどめる。

文脈: 近年の香り高く味が淡い嗜好,いわゆる淡麗辛口嗜好からの吟醸酒の注目度が増している。まさに『米白ければ酒にくせなし』である。
限界: 『くせ』は苦味・雑味を名指しした語ではなく、一般的な酒質の淡さ・純度を指す慣用句である。
データを表示ingredient-sake —is_associated_with→ "淡麗辛口嗜好(近年の香り高く味が淡い嗜好)"
claim: clm-sake-ogawa-tanreikarakuchi-discourse / type: cultural / 更新: 2026-09-01

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