茶の香気研究では、ある茎茶試料の中炒りの香り評価に"Bitter aroma"という記述が使われていたが、これは嗅覚での香りの質を指す表現であり、口に含んだ際の味覚としての苦味とは別のものである可能性がある。この「苦い香り」という感覚が具体的にどの香気成分や知覚的性質を指しているのか、追加の資料で確認する必要があるのではないか?
由来: 編集部が立てた問い
仮説は事実主張ではありません。面白さを探索の入口として保存し、これから資料・聞き書き・観察で確かめます。
加工・条件 / process-hojicha-roasting
hojicha roasting
模式図 — 写真ではなく、根拠をもとに苦味研究所が組んだ説明図

根拠の数値を図にしたもの(苦味研究所作成)· CC BY 4.0
ほうじ茶の焙煎で、何がどれだけ減るか(一番茶)
高知県茶業試験場の実測表から、一番茶の荒茶・浅炒・中炒・深炒でのエピガロカテキンガレート(EGCG)とカフェインの量(茶液100ml当たりmg)を棒の高さで表した図。EGCG は焙煎を深めるほど単調に減り、カフェインはほとんど減らない。カフェインの中炒りの値は資料の表に無い。
根拠: ev-hojicha-egcg-ecg-decrease-kochi · ev-hojicha-caffeine-decrease-degree
苦味を読む
ほうじ茶の焙煎は、緑茶の荒茶を浅炒り・中炒り・深炒りといった程度に分けて加熱する工程である。高知県農業技術センター茶業試験場が蒸し時間50秒の一番茶・刈番茶・二番茶の荒茶を自動連続式ほうじ茶機で焙煎した試験では、カテキン類合計(茶液100ml当たり)は一番茶で荒茶34.89mgから浅炒21.86mg・中炒14.59mg・深炒6.98mgへ、刈番茶で25.31mgから2.33mgへ、二番茶で54.51mgから8.68mgへと、いずれも焙煎程度を深めるほど減少した。ただしガロカテキンガレートなどエピ型でないカテキンは、荒茶から浅炒りにかけて増加したのち焙煎を深めると減少する山型の変化を示した。
苦味受容体TAS2R39を活性化するガレート型カテキンとして当ラボが記録しているエピガロカテキンガレート(EGCG)とエピカテキンガレート(ECG)も、焙煎程度を深めるほど大きく減少した。EGCG(茶液100ml当たり)は一番茶で荒茶20.38mgから浅炒6.29mg・中炒3.15mg・深炒1.18mgへ、刈番茶では12.82mgから深炒で0.00mgまで減少した。ただしこの高知県の資料は成分量の実測にとどまり、この減少が苦味の官能評価とどう対応するかまでは調べていない。カフェインは浅炒りではほとんど減少しなかった(一番茶で荒茶比101%)のに対し、深炒りでは一番茶94%・刈番茶87%と6〜13%減少した。
アミノ酸全体量も焙煎により急激に減少する。高知県の同じ試験では、一番茶のアミノ酸全体量(茶液100ml当たり)は荒茶33.52mgから浅炒4.10mg・中炒3.90mg・深炒3.10mgへ減少し、荒茶のアミノ酸は一番茶・刈番茶で11種類、二番茶で8種類だったが、刈番茶・二番茶の中炒り・深炒りではγ-アミノ酪酸・グルタミン酸・セリンの3種類のみが残り、中でもγ-アミノ酪酸がアミノ酸全体の約70%を占めた。報告書はアルギニン・ロイシン・リシン・γ-アミノ酪酸を苦味の呈味に分類しているが、これはアミノ酸単体の一般的な呈味分類であり、ほうじ茶自体の苦味を官能的に測定したものではない。
焙煎は香気成分も生み出す。高知県の試験では、焙煎香の成分である2-ethyl-3,5-dimethyl Pyrazineなどは荒茶からは検出されず焙煎後に検出され、一番茶・刈番茶では焙煎が浅いほど多かった。三重県産茶を扱った1999年の論文では、ほうじ茶・釜炒り茶ともにピラジン・ピロール・フラン・ピラノンなど糖とアミノ酸のMaillard反応生成物が香気成分の主体を占め、L-テアニンと糖の反応産物とされる1-ethyl-3,4-dehydropyrrolidoneが最高濃度で検出された。同じ論文では、150℃・12分の中炒り試料の香りが著者らにより"Bitter aroma, burnt roasted aroma"(苦い香り、焦げた焙煎香)と記述されている。これは嗅覚での香り評価であり、口に含んだ際の味覚としての苦味とは異なる点に注意を要する。130℃・10分の浅炒り試料は"Preferable roasted aroma"(好ましい焙煎香)とされた。
この本文で確認した範囲: カテキン類合計の焙煎程度別データの根拠に使用/エピ型でないカテキンの山型変化の根拠に使用/EGCG・ECGの焙煎程度別減少データの根拠に使用/カフェインの焙煎程度別減少率の根拠に使用/アミノ酸の急減と呈味分類の根拠に使用/ピラジン系香気成分の生成傾向の根拠に使用
この本文で確認した範囲: Maillard反応生成物の同定結果の根拠に使用/苦い香りという嗅覚評価表現の根拠に使用
関連をたどる
ほうじ茶の焙煎 →低減する→ 茶カテキン類 →の主要寄与体である→ 渋味
ほうじ茶の焙煎 →低減する→ カフェイン →の普遍的な代表としては不適…→ 苦味
ほうじ茶の焙煎 →低減する→ エピガロカテキンガレート(EGCG) →と相関する→ 苦味
茶の香気研究では、ある茎茶試料の中炒りの香り評価に"Bitter aroma"という記述が使われていたが、これは嗅覚での香りの質を指す表現であり、口に含んだ際の味覚としての苦味とは別のものである可能性がある。この「苦い香り」という感覚が具体的にどの香気成分や知覚的性質を指しているのか、追加の資料で確認する必要があるのではないか?
由来: 編集部が立てた問い
仮説は事実主張ではありません。面白さを探索の入口として保存し、これから資料・聞き書き・観察で確かめます。
構造化された主張 — 節を開くと、主張ごとの確度・根拠・限界が読めます
範囲: 高知県農業技術センター茶業試験場、蒸し時間50秒の一番茶・刈番茶・二番茶荒茶。自動連続式ほうじ茶機による2回焙煎(1回目排気温90℃、2回目排気温100℃でドラム回転数を茶期・焙煎程度ごとに調整)。
注記: HPLC(日本分光製X-LCシステム)による直接定量。試料は各条件1点のみで反復数の記載はない。
process-hojicha-roasting —reduces→ compound-catechins範囲: 高知県農業技術センター茶業試験場、上記と同一の一番茶・刈番茶・二番茶試料。
注記: 報告書の備考欄はアルギニン・ロイシン・リシン・γ-アミノ酪酸を「苦味」呈味に分類しているが、これはアミノ酸単体の一般的な呈味分類であり、ほうじ茶自体の官能的苦味を測定したものではない。苦味知覚への接続は未確認。
process-hojicha-roasting —has_composition→ "アミノ酸全体量(茶液100ml当たりmg)は、一番茶で荒茶33.52→浅炒4.10→中炒3.90→深炒3.10、刈番茶で15.32→2.77→2.38→2.32、二番茶で4.10→2.87→2.74→1.97と焙煎により急激に減少した。荒茶に含まれるアミノ酸の種類は一番茶・刈番茶で11種類、二番茶で8種類だったが、一番茶浅炒りではテアニン・アスパラギン酸・グルタミン酸・アルギニンなど8種類が残り、刈番茶・二番茶の中炒り・深炒りではγ-アミノ酪酸・グルタミン酸・セリンの3種類のみが残った。中でもγ-アミノ酪酸がアミノ酸全体の約70%を占めた。"範囲: 高知県農業技術センター茶業試験場、2014年、一番茶・刈番茶の荒茶を用いた浅炒り・深炒りほうじ茶(自動連続式ほうじ茶機による2回焙煎)。
注記: HPLC(Shimadzu製)による直接定量。
process-hojicha-roasting —reduces→ compound-caffeine範囲: 三重県水沢産おおいしだ茎(かぶせ栽培)、Table Iの試料記述。
注記: 著者らによる嗅覚での香り記述(aroma descriptor)であり、口に含んだ際の味覚としての苦味評価ではない。評価人数・尺度の記載はなく、Bitter aromaが指す具体的な香気の質は本文からは特定できない。苦味知覚一般への接続は慎重に扱う。
process-hojicha-roasting —has_sensory_attribute→ "三重県水沢産のおおいしだ茎(かぶせ栽培)を150℃・12分で焙煎した中炒り試料は、論文中の香り評価記述で"Bitter aroma, burnt roasted aroma"(苦い香り、焦げた焙煎香)とされた。同じ原料を130℃・10分で焙煎した浅炒り試料は"Preferable roasted aroma"(好ましい焙煎香)と評価され、荒茶(未焙煎)は"Fresh greenish, toasted laver-like"だった。"範囲: 高知県農業技術センター茶業試験場、GCMSによる香気成分分析(連続水蒸気蒸留法で抽出)。
注記: 図(レーダーチャート)による報告で数値表・反復数の記載はなく、統計的検定も示されていない。
process-hojicha-roasting —can_generate→ "焙煎香の香気成分である2-ethyl-3,5-dimethyl Pyrazine と Tetra methyl Pyrazine は荒茶からは検出されなかったが、焙煎することで検出された(二番茶のTetra methyl Pyrazineを除く)。両成分量は焙煎程度別では一番茶・刈番茶は焙煎が浅いほど多く、二番茶は焙煎程度による差がなかった。茶期別では一番茶が最も多く、次いで刈番茶、二番茶は少なかった。"範囲: 静岡県産露天栽培・三重県産覆下栽培の煎茶2種とその茎茶、佐賀県産の露天および覆下釜炒り茶。
注記: 浸出液抽出法(brewed method)による香気濃縮物調製、GC-MS(HP5972)による化合物同定(標準物質の保持指数とMSスペクトル一致)。
process-hojicha-roasting —is_prepared_by→ "森田式自動連続ほうじ茶機(投入量2kg)を用い、静岡・三重・佐賀産の露天栽培煎茶や覆下栽培煎茶(かぶせ)、玉緑茶など計14種の荒茶・浸出液を試料として、強火入れ100℃・15分、浅炒り130℃・10分、深炒り150℃・12分の各条件で焙煎した。三重・水沢園産の原料荒茶(大下茎・かぶせ茎)はすでに火入れ(80℃・20分)を経ていた。GC/MS分析で緑茶と比べほうじ茶で86化合物、釜炒り茶で44化合物が新たに同定された。"範囲: 上記14種の緑茶・釜炒り茶試料。
注記: GC/MSによる同定。化合物の生成機構(Maillard反応)自体は先行研究の知見を踏まえた考察を含む。
process-hojicha-roasting —can_generate→ "ほうじ茶・釜炒り茶ともに、ピラジン、ピロール、フラン、ピラノンなど糖とアミノ酸によるMaillard反応生成物が香気成分の主たる部分を占めた。特にL-テアニンと糖の加熱反応産物とされる1-ethyl-3,4-dehydropyrrolidoneは、焙煎茶・釜炒り茶の両方で最も高い濃度で検出された。"注記: エピガロカテキンガレートとエピカテキンガレートは、当ラボの既存資産ではヒト苦味受容体TAS2R39を活性化するガレート型カテキンとして記録されている成分である。ただしこの高知県の資料は成分量のみを測定しており、焙煎による成分減少が苦味知覚の変化にどう対応するかはこの資料からは確認できない。
process-hojicha-roasting —reduces→ compound-egcgprocess-hojicha-roasting —can_generate→ "エピ型でないガロカテキンガレート(茶液100ml当たりmg)は、一番茶で荒茶0.46→浅炒5.23→中炒3.53→深炒1.38、刈番茶で0.32→2.81→2.07→0.42、二番茶で0.83→8.21→5.88→2.41と、荒茶より焙煎後で高い値を示した。カテキンガレート・ガロカテキンも同様に荒茶より焙煎後で高い値をとる茶期があった。"