主題ハブ — 2026-10-21
チョコレートはカカオ分が高いほど苦いのか
カカオ分の数字が大きいチョコレートほど苦い。売り場でもそう受け取られていることが多い。 では、カカオ分と苦味を、人が食べて比べた研究は何と答えているか。 この頁では、収録した研究を、試料(カカオ分・砂糖・脂)・焙煎やアルカリ処理などの加工・誰がどの尺度で評価したか、という条件と一緒に並べる。 苦味に関わると言われる成分(テオブロミン・ポリフェノール)の量の研究も添える。 そのうえで、同じ実験の中で確かめられたことと、研究のあいだの違いから考えられる説明の候補と、 この比較だけでは分けられないことを、分けて書く。
このページの内容(10 節)
この頁でわかること
- カカオ分の高い市販品の方が苦いと評価された研究はあるが、比べた品は砂糖や脂も違っていたこと。
- カカオ分だけを変えて人が苦味を比べた全文は、探した範囲では見つからなかったこと。
- カカオ分を固定しても、砂糖・豆の産地・加工で苦味は大きく動くこと。
- 表示のカカオ分が高いほど苦味に関わるとされる成分は多いが、成分と苦さを同じ試料で並べた研究は無いこと。
収録した研究で言える範囲
- カカオ分の高い市販品の方が苦いと評価された研究はある。85% 表示と 36% 表示の 2 品では、苦味の中央値が 7.45 と 2 だった。ただし 2 品は砂糖・脂・原料も違い、カカオ分だけを変えて人が苦味を比べた全文は、探した範囲では見つからなかった。 [表の行: Wagner ら 2023 85% 対 36%]
- カカオ分を固定しても苦味は大きく動く。同じココア粉末の飲料で砂糖を 0 から 5% にすると苦味は 10.6 から 5.3 に下がり、同じ配合の 54 品でも苦味は 2.750 から 6.750 まで違った。表示のカカオ分が高いほどテオブロミンは多い(r=0.836)が、その研究は苦味を測っていない。 [表の行: Pedersen ら 2023 砂糖/Guzmán Penella ら 2023 同じ配合の 54 品/Altissimo ら 2026 表示のカカオ分]
苦味の評価の一覧
人の苦味の評価と、苦味に関わるとされる成分の量の結果を抜き出した。「比べた試料」と「比べた相手」の値は、論文の表や図のまま(図から読んだ値は目測と書いた)。成分の量の行も含む。 「向き」はどちらが苦かったかで書き、論文が差を認めていないものは「ほぼ同じ」とした。研究名を押すと、条件の詳しい表へ移る。
人が苦味を評価した結果だけを抜き出した一覧。値の出所(表の値か図からの目測か)は各行に書いた。研究ごとに尺度も測り方も違うので、行の中で比べ、行どうしは比べない。
| 研究 | 比べた組・条件 | 測り方 | 比べた試料 | 比べた相手 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| Wagner ら 2023 | 85% 対 36% カカオ 85% 表示の市販品 対 36% 表示の市販品 | 中央値、10 段階(39 名) | 7.45(四分位範囲 2.2) | 2(四分位範囲 3) | 比べた試料の方が苦い 検定あり・有意 |
| Pedersen ら 2023 | 砂糖 ココア粉末 3% で砂糖 0% 対 2.5%・5%(乳脂肪 2 水準をまとめた平均) | 15 cm の線の尺度(11 名) | 10.6(0%) | 8.2(2.5%)・5.3(5%) | 比べた試料の方が苦い 検定あり・有意 |
| Pedersen ら 2023 | 乳脂肪 ココア粉末 3% で乳脂肪 0.1% 対 4.5%(甘味の 4 条件をまとめた平均) | 15 cm の線の尺度(11 名) | 7.7(0.1%) | 7.2(4.5%) | ほぼ同じ 検定あり・有意差なし |
| Caponio ら 2020 | 同じ 70% 表示 職人品 対 工業品(どちらも 70% 表示) | 官能の点(50 名。苦味に使った尺度は本文から確かめられない) | 有意に高い(値は図だけ) | 値は図だけ | 比べた試料の方が苦い 検定あり・有意 |
| McClure ら 2022 | 焙煎の温度 焙煎温度が 1 標準偏差(42 °C)高い 対 平均 | gLMS(145 名) | 平均 26.9 から 1.56 低い(著者の換算) | 26.9(平均) | 比べた相手の方が苦い 検定あり・有意 |
| Juvinal ら 2023 | アルカリ処理 アルカリ処理の粉末 対 天然の粉末(試作) | 苦い後味、15 cm の線(8 名) | 2.9 | 2.4 | 比べた試料の方が苦い 検定あり・有意 |
| Guzmán Penella ら 2023 | 同じ配合の 54 品 同じ配合(カカオリカー 60%)の 54 品の中の最大 対 最小 | 0〜10 点(8 名の平均) | 6.750 | 2.750 | 比べた試料の方が苦い 検定の記載なし |
| 石川ら 2019 | 豆の産地 エクアドル 対 ガーナ・ベネズエラ(同じ配合) | −3〜+3 の 7 段階(53 名) | 1.3 | 0.5(ガーナ)・0.5(ベネズエラ) | 比べた試料の方が苦い 検定あり・有意 |
| 葛西ら 2007 | 成分との相関 7 産地のチョコレートの苦味の点と成分 | 相関係数 | r = 0.87(ポリフェノール) | r = 0.05(カフェイン)・−0.32(テオブロミン) | 比べた試料が高い 検定あり・一部の組だけ有意 |
研究ごとの条件と結果
研究ごとに、試料・加工・食べ方・評価の条件と、測った結果を並べる。行の単位は「研究×測定結果」で、 同じ研究の中の別の比較は別の行にした。各行の下に、論文での位置と、 その行が「カカオ分が高いほど人が苦く感じるか」の比較に使えるかを、理由と一緒に書いた。 空欄にせず、「記載なし」(論文に書かれていない)、「読んでいない」、「該当しない」を書き分けている。
Wagner ら 2023 官能だけ
Sensory and affective response to chocolate differing in cocoa content: A TDS and facial electromyography approach. Physiology & Behavior 270:114308 — doi:10.1016/j.physbeh.2023.114308
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — 機関リポジトリの PDF の全文(表 1、結果 3.1、図 1) 確かめた者: LLM(読み取りの係が抜き出し、別の者が原典で照合。人の確認は無い)、2026-10-21。
- 試料
- 市販の 2 品: カカオ 36% 表示(原材料の先頭が砂糖、植物脂を含む)と 85% 表示(カカオマス・脂肪を減らしたココアが先)。砂糖の重さの割合は記載なし
- 加工・調理
- 市販品のまま(処理は記載なし)
- 出し方・食べ方
- 5 g をそのまま食べる
- 誰が・どの尺度で
- 一般の 39 名(訓練なし)。各試料 2 回、TDS のあとで苦味と好ましさを 10 段階。Wilcoxon 検定と対応のある t 検定
| 測ったもの | 比べた組・条件 | 比べた試料 | 比べた相手 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 苦味の強さ(官能) | 85% 対 36% カカオ 85% 表示の市販品 対 36% 表示の市販品 | 7.45(四分位範囲 2.2) | 2(四分位範囲 3) | 中央値、10 段階(39 名) | 比べた試料の方が苦い 検定あり・有意 |
| Z=5.36、p<0.001。2 品は砂糖・脂・原料も違い、カカオ分だけの差ではない。好ましさは 85% が 4.4、36% が 6.29 原典の位置: 結果 3.1・表 1、p.3〜4 カカオ分が高いほど人が苦く感じるかの比較に: 限られる — カカオ分の違う 2 品を人が比べ検定もあるが、砂糖・脂・原料も違う市販品 1 組 | |||||
Pedersen ら 2023 官能だけ
Sensory Interactions between Sweetness and Fat in a Chocolate Milk Beverage. Foods — doi:10.3390/foods12142711
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — Europe PMC の全文(表 1・3) 確かめた者: LLM(読み取りの係が抜き出し、別の者が原典で照合。人の確認は無い)、2026-10-21。
- 試料
- 試作のチョコレートミルク。ココア粉末 3% は固定
- 加工・調理
- 乳脂肪 0.1% と 4.5% × 甘味の 4 条件(砂糖 0・2.5・5%、砂糖 2.5% にアセスルファム K 0.015%)
- 出し方・食べ方
- 8 °C で出した
- 誰が・どの尺度で
- 訓練された 11 名。15 cm の線の尺度、各 3 回。混合モデルの分散分析と Tukey 法
| 測ったもの | 比べた組・条件 | 比べた試料 | 比べた相手 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 苦味の強さ(官能) | 砂糖 ココア粉末 3% で砂糖 0% 対 2.5%・5%(乳脂肪 2 水準をまとめた平均) | 10.6(0%) | 8.2(2.5%)・5.3(5%) | 15 cm の線の尺度(11 名) | 比べた試料の方が苦い 検定あり・有意 |
| 3 条件はそれぞれ有意に違う(甘味の 4 条件の主効果 p<0.0001)。苦い後味も 9.9・7.2・5.1 原典の位置: 表 3 カカオ分が高いほど人が苦く感じるかの比較に: 限られる — ココア粉末を固定して砂糖だけを変えた。カカオ分は変えておらず、飲料の結果 | |||||
| 苦味の強さ(官能) | 乳脂肪 ココア粉末 3% で乳脂肪 0.1% 対 4.5%(甘味の 4 条件をまとめた平均) | 7.7(0.1%) | 7.2(4.5%) | 15 cm の線の尺度(11 名) | ほぼ同じ 検定あり・有意差なし |
| p=0.249 で有意差なし(同じという意味ではない) 原典の位置: 表 3 カカオ分が高いほど人が苦く感じるかの比較に: 限られる — 脂肪だけを変えたが、飲料の結果 | |||||
Caponio ら 2020 官能だけ
Chemical Characterization, Gastrointestinal Motility and Sensory Evaluation of Dark Chocolate: A Nutraceutical Boosting Consumers’ Health. Nutrients 12(4):939 — doi:10.3390/nu12040939
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — Europe PMC の全文(表 3・4、結果 5.2)。苦味の値は図 4 だけで、図は見ていない 確かめた者: LLM(読み取りの係が抜き出し、別の者が原典で照合。人の確認は無い)、2026-10-21。
- 試料
- どちらも 70% 表示のダークチョコレート、職人品と工業品(各 2 ロット)。砂糖の量・豆の由来は記載なし
- 加工・調理
- 市販品のまま
- 出し方・食べ方
- そのまま食べる
- 誰が・どの尺度で
- 健康な成人 50 名。0〜100 mm の線と 1〜5 の尺度。t 検定
| 測ったもの | 比べた組・条件 | 比べた試料 | 比べた相手 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 苦味の強さ(官能) | 同じ 70% 表示 職人品 対 工業品(どちらも 70% 表示) | 有意に高い(値は図だけ) | 値は図だけ | 官能の点(50 名。苦味に使った尺度は本文から確かめられない) | 比べた試料の方が苦い 検定あり・有意 |
| 炭水化物・脂肪・総ポリフェノールなどは有意差なし。テオブロミンはむしろ工業品が多い(1239 対 1437 µg/g、p=0.02) 原典の位置: 結果 5.2・表 3・4 カカオ分が高いほど人が苦く感じるかの比較に: 限られる — 同じ 70% 表示でも苦味が違った例。値は図だけで、2 品 × 2 ロット | |||||
Altissimo ら 2026 成分だけ
Chromatographic Profiling of Artisanal Chocolates: Volatile Composition and Methylxanthines as Markers of Cocoa Content. Journal of Food Science 91(3):e70979 — doi:10.1111/1750-3841.70979
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — Europe PMC の全文(表 3、相関と回帰)。カカオ分の範囲は要旨が 36〜100%、本文の群は 30〜65% と 70〜100% で合わない 確かめた者: LLM(読み取りの係が抜き出し、別の者が原典で照合。人の確認は無い)、2026-10-21。
- 試料
- ブラジルの小さな工場の職人チョコ 45 品。カカオ分は表示の値で、独立には測っていない。砂糖・乳の割合は記載なし
- 加工・調理
- 市販品のまま
- 出し方・食べ方
- 該当しない(人は食べていない)
- 誰が・どの尺度で
- 人の評価は無い。テオブロミンとカフェインを HPLC で測った
| 測ったもの | 比べた組・条件 | 比べた試料 | 比べた相手 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| テオブロミン | 表示のカカオ分 表示 70〜100% の群 対 30〜65% の群 | 12.43 ± 3.60 | 5.86 ± 3.40 | g/kg、平均 ± 標準偏差 | 比べた試料が高い 検定の記載なし |
| 2 群の差の検定は無い。表示のカカオ分との回帰は有意で、相関はテオブロミン r=0.836、カフェイン r=0.811(群の平均 1.08 対 0.45 g/kg)。苦味は測っていない 原典の位置: 表 3・結果 カカオ分が高いほど人が苦く感じるかの比較に: 使えない — 成分の量で、人の苦味ではない。カカオ分は表示の値 | |||||
McClure ら 2022 官能だけ
Optimizing consumer acceptability of 100% chocolate through roasting treatments and effects on bitterness and other important sensory characteristics. Current Research in Food Science — doi:10.1016/j.crfs.2022.01.005
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — Europe PMC の全文(表 1A、結果 3.1) 確かめた者: LLM(読み取りの係が抜き出し、別の者が原典で照合。人の確認は無い)、2026-10-21。
- 試料
- マダガスカル・ガーナ・ペルーの豆の 100% チョコレート(砂糖などを加えていない)。カカオ分は変えていない
- 加工・調理
- 焙煎は 8 条件と中心条件の重複を 3 産地に当てた計 27 処理(生の対照を含む、24〜171 °C・0〜80 分)
- 出し方・食べ方
- 約 0.3 g の円盤
- 誰が・どの尺度で
- 消費者 145 名を募集(初日に短い訓練)。1 試料あたり平均 104 名・148 回の評価。gLMS、混合効果モデル(平方根に変換)
| 測ったもの | 比べた組・条件 | 比べた試料 | 比べた相手 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 苦味の強さ(官能) | 焙煎の温度 焙煎温度が 1 標準偏差(42 °C)高い 対 平均 | 平均 26.9 から 1.56 低い(著者の換算) | 26.9(平均) | gLMS(145 名) | 比べた相手の方が苦い 検定あり・有意 |
| 温度の係数は有意(平方根の尺度で −0.1529)。時間と温度の交互作用も有意で、下がり方は焙煎時間によって違う。100% チョコレートで、カカオ分は変えていない。産地の平均はペルー 28.1・ガーナ 26.0・マダガスカル 26.8 原典の位置: 表 1A・結果 3.1 カカオ分が高いほど人が苦く感じるかの比較に: 限られる — カカオ分の直接の比較ではない(焙煎の比較)。カカオ分を固定しても苦味が動く例としては使える | |||||
Juvinal ら 2023 官能だけ
Physico-Chemical Property, Sensory Profile and Consumer Acceptability of Water Buffalo (Bubalus bubalis L.) Chocolate Milk Using Alkalized and Natural Cocoa Powder. Foods 12(9):1797 — doi:10.3390/foods12091797
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — Europe PMC の全文(表 2・4・6)。要旨は苦い後味を識別できた項目に入れていないが、表 4 は有意に違うとする 確かめた者: LLM(読み取りの係が抜き出し、別の者が原典で照合。人の確認は無い)、2026-10-21。
- 試料
- 水牛乳のチョコレートミルク。ココア粉末 1%・砂糖 7.5% の試作 2 品と市販 2 品
- 加工・調理
- アルカリ処理の粉末と天然の粉末(別の銘柄で、pH・脂肪・灰分も違う)
- 出し方・食べ方
- 4 °C で出した
- 誰が・どの尺度で
- 訓練された 8 名(15 cm の線、4 回。製品・評価者・反復の 3 要因の分散分析と Tukey 法、5% 水準)と消費者 120 名(9 段階の好ましさ)
| 測ったもの | 比べた組・条件 | 比べた試料 | 比べた相手 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 苦味の強さ(官能) | アルカリ処理 アルカリ処理の粉末 対 天然の粉末(試作) | 2.9 | 2.4 | 苦い後味、15 cm の線(8 名) | 比べた試料の方が苦い 検定あり・有意 |
| 粉末は別の銘柄で、pH・脂肪・灰分も違う。市販の 2 品(アルカリと天然)はどちらも 1.8 原典の位置: 表 2・4 カカオ分が高いほど人が苦く感じるかの比較に: 限られる — カカオ分の直接の比較ではない。アルカリ処理は粉末の銘柄と分けられないが、加工で苦い後味が違った例として使える | |||||
Guzmán Penella ら 2023 官能だけ
Link between Flavor Perception and Volatile Compound Composition of Dark Chocolates Derived from Trinitario Cocoa Beans from Dominican Republic. Molecules 28(9):3805 — doi:10.3390/molecules28093805
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — Europe PMC の全文(付録の表 A1) 確かめた者: LLM(読み取りの係が抜き出し、別の者が原典で照合。人の確認は無い)、2026-10-21。
- 試料
- 同じ時期の同じ品種群(トリニタリオ)の豆から作った 54 品。配合はどれもカカオリカー 60%・砂糖 30%・カカオバター 10%
- 加工・調理
- 発酵・焙煎・精製の条件は非公開
- 出し方・食べ方
- そのまま食べる
- 誰が・どの尺度で
- 訓練された 13 名。0〜10 点、平均は識別力の高い 8 名の点から
| 測ったもの | 比べた組・条件 | 比べた試料 | 比べた相手 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 苦味の強さ(官能) | 同じ配合の 54 品 同じ配合(カカオリカー 60%)の 54 品の中の最大 対 最小 | 6.750 | 2.750 | 0〜10 点(8 名の平均) | 比べた試料の方が苦い 検定の記載なし |
| 54 品の平均は 4.108、標準偏差 0.991。発酵・焙煎・精製の条件は非公開 原典の位置: 付録の表 A1 カカオ分が高いほど人が苦く感じるかの比較に: 限られる — カカオ分を固定しても苦味がこれだけばらつく例。条件は非公開で検定は無い | |||||
石川ら 2019 官能だけ
TI・TDS 法によるカカオ豆の異なるビターチョコレートの呈味特性. 日本官能評価学会誌 23(1):14-25 — doi:10.9763/jjsse.23.14
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — J-STAGE の PDF の全文(表 1、図 1)。図の数値は印字の値 確かめた者: LLM(読み取りの係が抜き出し、別の者が原典で照合。人の確認は無い)、2026-10-21。
- 試料
- 試作のビターチョコレート 3 種(ガーナ・エクアドル・ベネズエラの豆)。配合はどれもカカオマス 40%・カカオバター 20%・砂糖 39.7%
- 加工・調理
- 120〜130 °C で 60 分焙煎
- 出し方・食べ方
- 2 g を噛まずになめる。ノーズクリップをつけて評価
- 誰が・どの尺度で
- 訓練された 10 名と女子学生 43 名。−3〜+3 の 7 段階(2 つのパネルを合算)。Tukey 法
| 測ったもの | 比べた組・条件 | 比べた試料 | 比べた相手 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 苦味の強さ(官能) | 豆の産地 エクアドル 対 ガーナ・ベネズエラ(同じ配合) | 1.3 | 0.5(ガーナ)・0.5(ベネズエラ) | −3〜+3 の 7 段階(53 名) | 比べた試料の方が苦い 検定あり・有意 |
| エクアドルが他の 2 つより有意に高い(Tukey、5% 水準)。時間曲線(TI 法、10 名)から出した 4 つの指標では有意差なし 原典の位置: 図 1、p.19 カカオ分が高いほど人が苦く感じるかの比較に: 限られる — カカオ分と砂糖を固定して産地だけを変えた。カカオ分の比較ではない | |||||
葛西ら 2007 官能だけ
カカオ豆産地とチョコレートのおいしさとの関係. 日本食品科学工学会誌 54(7):332-338 — doi:10.3136/nskkk.54.332
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — J-STAGE の PDF の全文(表 1・2・4・5)。PDF の文字が崩れるので頁の画像を文字に起こして読んだ。要旨と本文で評価者の人数が合わない 確かめた者: LLM(読み取りの係が抜き出し、別の者が原典で照合。人の確認は無い)、2026-10-21。
- 試料
- 試作のチョコレート 7 種(7 産地の豆)。配合はどれもカカオマス 40%・カカオバター 20%・砂糖 39.7%
- 加工・調理
- 110 °C で 80 分焙煎。80 °C で 19 時間と 50 °C で 1 時間精練し、18 °C で 2 週間おいた
- 出し方・食べ方
- 5 g をそのまま食べる
- 誰が・どの尺度で
- 訓練された女性 12 名(本文。要旨は 20 名)。ガーナを 0 にした −3〜+3 の 7 段階、2 回。分散分析と Tukey 法
| 測ったもの | 比べた組・条件 | 比べた試料 | 比べた相手 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 苦味の強さ(官能) | 成分との相関 7 産地のチョコレートの苦味の点と成分 | r = 0.87(ポリフェノール) | r = 0.05(カフェイン)・−0.32(テオブロミン) | 相関係数 | 比べた試料が高い 検定あり・一部の組だけ有意 |
| ポリフェノールとは有意(1% 水準)、カフェイン・テオブロミンとは有意な相関は示されなかった。相関の数の数え方(試料か評点か)は書かれていない。苦味の点はスラヴェシ 1.75 からカレネロ −0.04(ガーナを 0) 原典の位置: 表 2・4・5 カカオ分が高いほど人が苦く感じるかの比較に: 限られる — カカオ分を固定した 7 産地の相関。成分と苦味を同じ試料で並べたが、カカオ分は変えていない | |||||
実験の中で確かめられたこと
同じ研究の中で、同じ評価者が条件を変えて比べた結果だけを書く。
- 39 名が市販の 85% 品と 36% 品を食べ比べると、苦味の中央値は 7.45 と 2 で有意に違い(p<0.001)、好ましさは 85% 品の方が低かった(4.4 と 6.29)。 [表の行: Wagner ら 2023 85% 対 36%]
- ココア粉末 3% のチョコレートミルクで、砂糖 0・2.5・5% の苦味は 10.6・8.2・5.3 と有意に下がった。乳脂肪 0.1% と 4.5% では 7.7 と 7.2 で有意差はなかった。 [表の行: Pedersen ら 2023 砂糖/Pedersen ら 2023 乳脂肪]
- どちらも 70% 表示の職人品と工業品では、職人品の苦味の点が有意に高かった。総ポリフェノールなどは有意差がなく、テオブロミンはむしろ工業品が多かった(1239 対 1437 µg/g)。 [表の行: Caponio ら 2020 同じ 70% 表示]
- 職人チョコ 45 品では、表示のカカオ分が高いほどテオブロミン(r=0.836)とカフェイン(r=0.811)が多かった(人の評価は無い)。 [表の行: Altissimo ら 2026 表示のカカオ分]
- カカオ分 60%・砂糖 39.7% の同じ配合で豆の産地だけを変えると、エクアドルの苦味(1.3)がガーナとベネズエラ(0.5)より有意に高かった。 [表の行: 石川ら 2019 豆の産地]
- 砂糖などを加えない 100% チョコレートでは、焙煎の温度が高いほど苦味が下がった(1 標準偏差の 42 °C で平均 26.9 から 1.56 低い、著者の換算)。ただし時間との交互作用があり、下がり方は焙煎時間で違う。 [表の行: McClure ら 2022 焙煎の温度]

砂糖なし
砂糖を少し
砂糖を多め
ココア粉末の量を同じにしたチョコレートミルクで、砂糖だけを増やすと苦味の評点が下がった研究。グラスの中身の色は、ココアの量が同じことを示す。角砂糖の数と印の紫の濃淡は順序だけを示し、砂糖の量や苦味の差の大きさを表すものではない。紫は実際の色ではない。この試験はカカオ分を変えていない。
出典: Pedersen ほか 2023(表の「研究ごとの条件と結果」の Pedersen ら 2023)
説明図: イラスト係(PurpleHeron)
結果の違いの説明の候補
研究のあいだ、または試料のあいだで違う条件のうち、苦味の違いを説明しうるもの。 複数の条件が同時に違うので、どれが効いたかは分からない。ここに書くのは候補で、原因ではない。
- 砂糖の量。カカオ分の高い品は砂糖が少ないことが多いが、市販品の砂糖の量は測られていない。ココア粉末を固定して砂糖だけを変えた飲料で苦味が約半分になった(10.6 から 5.3)ので、カカオ分の違う市販品の差に砂糖の差が混ざっている可能性がある。 [表の行: Pedersen ら 2023 砂糖/Wagner ら 2023 85% 対 36%]
- 豆と加工。同じ配合の 54 品で苦味の点が 2.750〜6.750 にばらつき、同じ配合で産地だけを変えても苦味が違い(1.3 と 0.5)、焙煎の温度でも苦味が動いた。加工などの、ラベルの数字に入らない部分が候補だが、54 品のばらつきの原因は分けられていない。 [表の行: Guzmán Penella ら 2023 同じ配合の 54 品/石川ら 2019 豆の産地/McClure ら 2022 焙煎の温度]
- ポリフェノール。同じ配合の 7 産地では、ポリフェノールの多いものほど苦い相関があった(r=0.87)が、カフェインやテオブロミンとは有意な相関は示されなかった。相関で、原因を示したものではない。 [表の行: 葛西ら 2007 成分との相関]
分かっていないこと——この比較だけでは分けられないこと
- カカオ分そのものと砂糖。カカオ分と砂糖を別々に変えて人が苦味を比べた研究は、収録した範囲に無く、市販品の差がどちらによるかは分けられない。 [表の行: Wagner ら 2023 85% 対 36%/Pedersen ら 2023 砂糖]
- 成分が苦味を説明するか。収録した研究には、カカオ分を変えた試料で苦味の点と成分を同じ試料で並べたものは無い。成分が多いことと苦く感じることは、別々の研究にある(両方を測った研究はカカオ分を固定している)。 [表の行: Altissimo ら 2026 表示のカカオ分/Wagner ら 2023 85% 対 36%]
- 苦味と好み。苦い方が好ましさも低かったが、同じ試食で両方を答えており、苦さの評価に好みが混ざっていないかは分けられない。 [表の行: Wagner ら 2023 85% 対 36%]
研究と行の数え方
根拠の行の数は、研究の数ではない。表の行・台帳の根拠の行・論文・研究グループを分けて数える。
- 表に入れた資料: 9 本。うち人が評価した苦味の結果をこの表に載せたのは 8 本。ほかは、別のもの(成分・におい)の結果だけを載せたか、条件を考える材料として入れた。
- 表の行(研究×測定結果): 10 行。うち人が感じる苦味の行: 9 行。
- この表が拠っている研究所の台帳の根拠の行: 0 行。1 本の論文から複数の行を作っている。台帳の根拠の行が無い行は、同じ論文の別の表から取った値か、この問いのために新しく読んだ資料の値である。
- 苦味の結果を載せた研究の、台帳の上の研究グループの区分の数: 8(同じ研究室の報告は 1 つと数えた。共著者や所属が重なる所もあり、独立した追試の数ではない)。
調べた範囲
この問いのために見た資料と、表に入れた・除いた理由、全文に当たれなかった資料を残す。 Europe PMC・J-STAGE で、チョコレートやココアの苦味の官能評価と、カカオ分・砂糖・脂・焙煎・アルカリ処理を扱う研究を探し、研究所の台帳にある資料と合わせた(CiNii は探していない)。
| 資料 | 扱い | 理由 |
|---|---|---|
| Sensory and affective response to chocolate differing in cocoa content: A TDS and facial electromyography approach (2023) doi | 表に入れた | カカオ分の違う 2 品の苦味を人が比べた。全文で読んだ |
| Sensory Interactions between Sweetness and Fat in a Chocolate Milk Beverage (2023) doi | 表に入れた | ココア粉末を固定して砂糖と脂肪を変えた。全文で読んだ |
| Chemical Characterization, Gastrointestinal Motility and Sensory Evaluation of Dark Chocolate: A Nutraceutical Boosting Consumers’ Health (2020) doi | 表に入れた | 同じ 70% 表示の 2 品の苦味と成分。全文で読んだ |
| Chromatographic Profiling of Artisanal Chocolates: Volatile Composition and Methylxanthines as Markers of Cocoa Content (2026) doi | 表に入れた | 表示のカカオ分と成分の関係。全文で読んだ |
| Optimizing consumer acceptability of 100% chocolate through roasting treatments and effects on bitterness and other important sensory characteristics (2022) doi | 表に入れた | 焙煎で苦味が変わる例。全文で読んだ |
| Physico-Chemical Property, Sensory Profile and Consumer Acceptability of Water Buffalo (Bubalus bubalis L.) Chocolate Milk Using Alkalized and Natural Cocoa Powder (2023) doi | 表に入れた | アルカリ処理の粉末の苦い後味。全文で読んだ |
| Link between Flavor Perception and Volatile Compound Composition of Dark Chocolates Derived from Trinitario Cocoa Beans from Dominican Republic (2023) doi | 表に入れた | 同じ配合の 54 品の苦味のばらつき。全文で読んだ |
| TI・TDS 法によるカカオ豆の異なるビターチョコレートの呈味特性 (2019) doi | 表に入れた | 同じ配合で産地だけを変えた。全文で読んだ |
| カカオ豆産地とチョコレートのおいしさとの関係 (2007) doi | 表に入れた | 同じ配合で産地を変え、苦味と成分の相関を出した。全文で読んだ |
| The effect of fat content on sensory perception and consumer acceptability of 70% cacao dark chocolate made from reconstituted cocoa liquor (2023) doi | 全文に当たれない | 固形のチョコレートで脂肪を増やすと苦味が下がったとする。全文は確認画面で取れず、抄録だけ |
| Sensory evaluation of dark origin and non-origin chocolates applying Temporal Dominance of Sensations (TDS) (2018) doi | 全文に当たれない | カカオ分と苦味が目立つ割合の関係を比べた。全文に当たれず、抄録だけ |
| Tolerance for High Flavanol Cocoa Powder in Semisweet Chocolate (2013) doi | 表に入れず、文脈の資料として見た | カカオ分を同じにしてフラバノールの多い粉末を増やすと受け入れられなくなる点を求めた。苦味は評価していない |
| カカオ豆のロースト条件とビターチョコレート嗜好の関連性 (2018) doi | 表に入れず、文脈の資料として見た | 同じ配合で焙煎と産地を変えた。苦味の値は図だけで、カカオ分は変えていない |
| Microwave Roasting as an Alternative to Convection Roasting: Sensory Analysis and Physical Characterization of Dark Chocolate (2023) doi | 表に入れず、文脈の資料として見た | 焙煎の方式の比較で、苦味の強さは点にしていない |
図鑑で読む
- ダークチョコレート — この問いの食品
- ココア粉末 — 飲料の比較で使われた原料
- カカオの苦味と渋味 — 豆・加工・配合のどこで変わるか — カカオの主題ハブ
- コーヒーは深煎りほど苦いのか — 同じ形の比較の頁
出典台帳
表の各研究の出典は、研究ごとの欄からたどれる。研究所の全体の出典は出典台帳にまとめている。
この頁の引用のしかた
青木大(NIGAMI LAB)(2026). チョコレートはカカオ分が高いほど苦いのか — 研究ごとの条件と結果. https://nigamilab.com/topics/cacao-percent/
主張ごとの固定リンクは各カードの #clm-… です。データは CC BY 4.0、配布は データを使う。 データセットの DOI: 10.5281/zenodo.22739101