調整不足灌漑を施したブドウのワインでは、渋み関連の質感評価に差が見られている。同じ処理区の官能評価で『苦味』という独立の記述子を用いた場合にも、渋みと同じ方向の差が出るのだろうか。渋みの評価だけで苦味の変化まで語れるのだろうか?
由来: 資料接続あり
注記: 調整不足灌漑を扱った研究の記述的官能分析に、苦味の独立記述子が含まれていなかったことから生じた疑問。
仮説は事実主張ではありません。面白さを探索の入口として保存し、これから資料・聞き書き・観察で確かめます。
食材 / ingredient-wine
wine
苦味を読む
市販の辛口白ワイン42本を対象に、訓練パネルが官能特性から苦味の異なる2群に分類したうえで、文献に頻出する既知苦味化合物27種をLC-HRMSで定量した2024年の研究がある。検出された化合物濃度は概して呈味閾値を下回っており、定量値と試飲した苦味強度との間に有意な正の相関は見られなかった。著者らはこの陰性結果を、白ワインの苦味には未特定の指標が関与することを示唆すると位置づけている。
この陰性結果と対をなすのが、2012年のAWRI最終報告書が示す推論である。報告書は、カテキン以外の代表的な単量体フラバン-3-オール(エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキン)の苦味が、意図的・非意図的な果皮や種子との接触があった場合には特に、白ワインの苦味にさらに寄与しうると記す。ただしこれは断定形ではなく推論(likely to)としての記述であり、実験による直接の検証を伴わない。
果皮浸漬の長さが感覚に与える影響は、測定手法によって結論が食い違うことも報告されている。2009年・2010年産のリースリングとゲヴュルツトラミネールで果皮浸漬時間を変えて仕込んだワインを、記述分析(DA)・時間強度法(TI)・感覚支配時間法(TDS)の3手法で比較した研究では、果皮上で完全発酵させたワインはDA・TIでは最も苦味が強かったが、TDSではその同じワインで優勢だったのは苦味ではなく渋味の口内感触だった。
低介入・自然発酵によるスキンコンタクト仕込み(オレンジワイン)を対象にした2026年の学会ポスター報告では、アルメニア産Mskhali種とジョージア原産のRkatsiteli種、及び両者のブレンドを、アルメニア・イタリアの2パネルが記述的に評価した。共有された記述子には『中程度の苦味』と『紅茶様の渋味』が含まれ、フェノール含量が高いとされるRkatsiteliを含むブレンドは、Mskhali単体よりも構造化された紅茶様のタンニン感を持つと報告されている。ただし査読の有無は資料上明記されておらず、ポスター形式・小規模である点を踏まえ、この記述は予備的な段階の報告として位置づけられる。
この本文で確認した範囲: 既知苦味化合物27種の定量値と官能苦味強度の間に有意な相関が見られなかった陰性結果を確認した
この本文で確認した範囲: 単量体フラバノールが果皮接触時に苦味に寄与しうるという報告書の推論的記述を確認した
この本文で確認した範囲: DA/TIとTDSで苦味・渋味の優勢の結論が食い違った測定手法間の対比を確認した
この本文で確認した範囲: 中程度の苦味と紅茶様の渋味という記述子が2パネルに共有された点を確認した/ブレンドがMskhali単体より構造化された紅茶様タンニン感を持つという品種間比較を確認した
別名: wine(en)
関連をたどる
ワイン →知覚苦味に影響する要因→ スキンコンタクト(果皮浸漬)
調整不足灌漑を施したブドウのワインでは、渋み関連の質感評価に差が見られている。同じ処理区の官能評価で『苦味』という独立の記述子を用いた場合にも、渋みと同じ方向の差が出るのだろうか。渋みの評価だけで苦味の変化まで語れるのだろうか?
由来: 資料接続あり
注記: 調整不足灌漑を扱った研究の記述的官能分析に、苦味の独立記述子が含まれていなかったことから生じた疑問。
仮説は事実主張ではありません。面白さを探索の入口として保存し、これから資料・聞き書き・観察で確かめます。
構造化された主張 — 節を開くと、主張ごとの確度・根拠・限界が読めます
範囲: 市販辛口白ワイン42本。訓練パネルによる官能特性評価で苦味の異なる統計的2群に分類。文献で頻出する既知苦味化合物27種をLC-HRMSで定量(5種の定量法を開発・妥当性確認、うち25種を甘口ワイン、22種をぶどう果汁でも測定)。
注記: 検出された化合物濃度は概して呈味閾値を下回っていた。試飲した試料の苦味強度と、測定した既知苦味化合物の濃度との間に、有意な正の相関は見られなかった。著者らはこれを、白ワインの苦味には他の未特定の指標(化合物)が存在することを示唆する結果としている。
ingredient-wine —has_candidate_bitterness_contributors→ "既知の苦味化合物の濃度は白ワインの苦味強度と有意に相関せず、主要因は未特定(候補段階)。"範囲: リースリング・ゲヴュルツトラミネール(2009年・2010年産)、果皮浸漬時間を変えて仕込んだワイン。記述分析(DA)・時間強度法(TI)・感覚支配時間法(TDS)の3手法で比較。
注記: 記述分析ではリースリングは苦味と色のみで差が出たのに対し、ゲヴュルツトラミネールは苦味・甘味・酸味・渋味と複数の香り属性・色で有意差が出た。果皮上で完全発酵させたワインは、時間強度法・記述分析ではどのワインよりも有意に苦味が強かったが、感覚支配時間法(TDS)ではそのワインで優勢だった感覚は苦味ではなく渋味の口内感触だった。測定手法(DA/TIとTDS)によって『どちらが優勢か』の結論が食い違いうることを示す例として収載。
ingredient-wine —has_perceived_bitterness_affected_by→ process-skin-contact-maceration範囲: アルメニア産Mskhali種・ジョージア原産で同国でも広く栽培されるRkatsiteli種、低介入・自然発酵によるスキンコンタクト(オレンジワイン)仕込み。アルメニア・イタリアの2パネルによる記述評価。WAC-IVAS 2026学会ポスター発表(2026-06-25付、DOI未確認)。
注記: 2パネルが共有した記述子として、ドライフルーツ・煮りんご・杏・くるみ・蜂蜜・青い(vegetal)ノート・オレンジブロッサムに加え、『中程度の苦味』と『紅茶様の渋味』が挙げられた。査読の有無が資料上明記されておらず、ポスター形式・小規模である点を踏まえ preliminary とする。
ingredient-wine —has_perceived_bitterness_associated_with→ process-skin-contact-maceration範囲: 同報告書1.2.3節末尾。カテキン以外の代表的な単量体フラバン-3-オール(エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキン)についての記述。
注記: 報告書は『(意図的・非意図的を問わず)発酵前に果皮・種子との接触があった場合には特に、これら単量体フラバノールの苦味が白ワインの苦味にさらに寄与しうる』という趣旨を、断定形ではなく推論(likely to)として記す。直接の実験結果ではなく報告書著者の推論的記述であることを明示して収載。
ingredient-wine —has_bitterness_attributed_to→ "単量体フラバノール(果皮接触で増えるとする報告書の仮説段階の帰属)。"範囲: Cabernet Sauvignon、2008年収穫ワイン、瓶熟12ヶ月後
注記: 本研究の記述的官能分析(DA)で用いられた7属性はいずれも渋み・色関連の質感/外観記述子であり、苦味を直接測定した記述子は含まれていない。序論部でタンニンが渋みに加え苦味も引き起こしうる旨の一般論が引用されているが、これは本研究自体の測定結果ではない。
ingredient-wine —has_sensory_attribute→ "2008年収穫のCabernet Sauvignonワイン(瓶熟12ヶ月後)を訓練パネルが記述的官能分析(2010年実施)。FD区ワインは色調彩度が最も高く紫色調が強く、粗さ(roughness)・乾いた収斂感(dryness)・粗野さ(harshness)といった口腔内質感属性も最も強く、ED区が僅差で続いた。IS区・LD区は彩度が低く褐色・赤色調が強かった。分析対象の7属性はいずれも渋み・色に関わる記述子で構成され、『苦味(bitterness)』という独立の記述子は選定されていない。"範囲: Napa Valley Cabernet Sauvignon、過去10年ほどのスタイル変化についてのMaster of Wine Benjamin Lewin自身の分析記事
注記: 著者自身(Benjamin Lewin MW)の記述として “they are finer and silkier, and because there is less bitterness on the finish, the fruits seem purer on young wines” とあり、これを『過去10年間でナパにおける最大の進歩』と評する。美食・高級ワイン生産の側が意図的にタンニンの苦味を弱める方向へ様式を変えてきたと読める、『美食も苦味を抜いている』側の資料。化学分析や官能パネルによる裏付けではなく、専門家個人の様式観察であることに注意。
ingredient-wine —has_bitterness_character_influenced_by→ "ナパのカベルネ・ソーヴィニヨンでは、過去10年ほどでタンニンが総じてより繊細・滑らかになったとされ、それに伴い仕上がりに残る苦味が減ったとワイン専門家に評されている"