研究ノート 057 — 2026-09-16
レタスが苦いとき、ドレッシングで変わるのか
レタスをひと口食べて、思ったより苦い。そんなとき、ドレッシングで味は変わるのか。直接レタスを含む大会要旨では、開発したドレッシングを加えると、人が味わう評価で苦味が弱まった。食酢を含む味付けは試す候補になる。
このページの内容(7 節)
この頁でわかること
- レタスを含む4つの野菜では、開発ドレッシングの有無を比べた官能評価で苦味が弱まったと、一つの大会要旨に記録されている。
- レタスを粉砕したろ液の機器測定では、ドレッシング原料のうち食酢による苦味低減が特に大きかった。
- レタスと同じキク科のエンダイブでは、酸性のノンオイル青じそドレッシングを使った6人全員が、苦味を弱く感じる選択肢を選んだ。
- 同じ論文は理由も示す。葉の乳液に多い苦味の弱い成分が、噛んで唾液と混ざるうちに苦味の強いラクチュコピクリンへ変わり、ドレッシングの酸がその変化を抑える。水で噛むと苦味の強い側が45.5%、ドレッシングをかけて噛むと3.9%だった。
まず、レタスを人が味わった結果
2021年の大会要旨は、レタス、トマト、キャベツ、ブロッコリーに開発ドレッシングを加え、苦味、渋味、青臭さを比べている。機器測定だけでなく、ドレッシングの有無を人が味わう官能評価も行い、その感覚が弱まったと記す。4つの野菜ではレタスで最も効果がみられた。
範囲: キユーピー所属著者による2021年大会要旨。レタスを含む4野菜のドレッシング有無の官能評価。
注記: 評価者数、品種・部位、配合、添加量、尺度、統計値は要旨にない。任意の市販ドレッシングの再現性と家庭での適量は未検証。
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ingredient-lettuce —has_perceived_bitterness_suppressed_by→ "開発ドレッシングの添加。大会要旨は、レタス・トマト・キャベツ・ブロッコリーの官能評価で苦味、渋味、青臭さが低減し、レタスで最も効果がみられたと記載する。"これは「レタスの苦味に味付けで手を入れられる」という直接の手がかりである。
食酢の結果は、人ではなく機器で測った
同じ研究は、レタスに水を加えて粉砕し、ろ過した液へ、卵黄、食油、食酢、にんじんピューレを別々に加えた。味認識装置で比べると、苦味の低減は食酢で特に大きかった。
範囲: レタスを水とともに粉砕・ろ過したろ液への卵黄、食油、食酢、にんじんピューレの個別添加と機器評価。
注記: 人が酢をかけたレタスを味わった比較ではない。原料濃度、品種、部位、数値、統計値は要旨にない。
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ingredient-lettuce —has_e_tongue_bitterness_reduced_by→ "食酢。レタスろ液へドレッシング原料を個別に加えた味認識装置の評価では、苦味の低減効果は食酢で特に高かった。"ここには大切な境界がある。人が味わったのは開発ドレッシングを加えた野菜であり、食酢だけを加えたレタスを人が比べたわけではない。「酢だけで同じように食べやすくなる」「酸味との釣り合いもよくなる」とまでは読めない。食酢は作用を考える手がかりであり、完成した家庭向け手順ではない。
| 比較 | 対象 | 直接読めること |
|---|---|---|
| 開発ドレッシングの有無 | レタスを含む4つの野菜を人が評価 | 苦味、渋味、青臭さが弱まり、レタスで効果が最も大きかった |
| 原料を一つずつ添加 | レタスのろ液を機器で評価 | 苦味の低減は食酢で特に大きかった |
エンダイブの小さな試験が示すこと
別の論文は、レタスではなくエンダイブを使っている。当日収穫した葉を6人が食べると、全員が「最初はそれほど感じないが、噛んでいると苦味がでてくる」を選んだ。酸性の市販ノンオイル青じそドレッシングをかけた場合は、6人全員が「苦味は弱くなる」を選んだ。直接の官能対象が違うため、レタスの再現試験として数えることはできない。
範囲: 当日収穫したエンダイブ葉と市販ノンオイル青じそドレッシングを用いた6名の官能試験。
注記: 単一商品、6名、比較順序の固定、盲検・無作為化の記載なし。レタスの直接官能試験ではない。
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ingredient-endive —has_perceived_bitterness_suppressed_by→ "酸性の市販ノンオイル青じそドレッシング。エンダイブ6名の官能試験では全員がドレッシングにより苦味を弱く感じる選択肢を選んだ。"なぜ弱まるのか。酸が、口の中で苦味ができるのを抑えている
エンダイブの論文の本体は、6人の官能ではなく、その理由の測定にある。エンダイブやレタスの葉の乳液に多いのは、苦味の弱いラクチュコピクリン 15-オキサレートで、苦味の強いラクチュコピクリンは合計の1%に満たない(エンダイブ0.9%、レタス0.6%)。ところが葉8 gに水をかけて30秒噛んだ咀嚼物では、苦味の強い側の割合が45.5%まで増えていた。噛んで唾液と混ざるうちに、苦味の弱い成分から苦味の強い成分ができている。6人全員が「噛んでいると苦味がでてくる」を選んだことと、この数字は同じ現象を指している。
範囲: 堀江2011の表1・表2。当日収穫したエンダイブ(タキイ種苗)の葉。咀嚼物はニンニク搾りで搾った汁液中の濃度、n=4
注記: L が LO から中性〜弱アルカリ性で生成し弱酸性で抑えられることは緩衝液抽出(pH 5.5・6.5・7.5 で L の割合 1%以下・4%・9%)で確認。咀嚼後の45.5%は pH だけでは説明できず、唾液中の無機イオン・酵素・微生物の関与は今後の課題と著者が記す。
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ingredient-endive —has_bitterness_generated_by→ "咀嚼中に唾液と混ざるうちに、乳液中の苦味の弱い lactucopicrin 15-oxalate(LO)から苦味の強い lactucopicrin(L)が生成すること。葉8 gに水3 mLをかけて30秒(約60回)噛んだ咀嚼物では、LとLOの合計に占めるLの割合が45.5%(LO 13.3 μM・L 11.0 μM)に達した。乳液そのものではLは合計の0.9%にすぎない"酸性のノンオイル青じそドレッシング(pH 3.8)をかけて噛むと、苦味の強い側の割合は3.9%にとどまった。咀嚼物のpHは4.6〜5.0で、5%酢酸に3秒つけた葉でも同じように低く抑えられた。緩衝液で抽出した実験でも、pH 5.5では1%以下、6.5で4%、7.5で9%と、中性から弱アルカリ性で苦味の強い成分が増え、弱酸性ではその生成が抑えられる。ドレッシングがしているのは、苦味を覆い隠すことではなく、口の中で苦味の強い成分ができるのを抑えることだ、というのが著者の結論である。油には苦味を覆う可能性があるため、この実験では油を含まないドレッシングが選ばれている。
範囲: 堀江2011の表2と本文。水をかけて噛んだ対照(45.5%)との比較、n=4。油脂が苦味を覆う可能性を避けるためノンオイルのドレッシングを用いた
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ingredient-endive —has_debittering_most_likely_due_to→ "ドレッシングの酸が、咀嚼中の lactucopicrin(L)の生成を抑えること。市販ノンオイル青じそドレッシング(pH 3.8)3 mLをかけて30秒噛んだ咀嚼物では、LとLOの合計に占めるLの割合は3.9%(LO 22.4 μM・L 0.9 μM)にとどまり、咀嚼物のpHは4.6〜5.0だった。5%酢酸に3秒浸漬した葉でもLの割合は低く抑えられた"範囲: 堀江2011の図1。エンダイブの葉に9倍量の0.1 Mリン酸緩衝液を加えて3分間破砕抽出、n=3
注記: レタス・エンダイブの乳液を迅速に分析すると L は合計の1%以下(エンダイブ0.9%・レタス0.6%)で、分析の前処理でも LO から L が生成しうると著者は注意する。
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compound-lactucopicrin —is_derived_from→ "lactucopicrin 15-oxalate(LO)の分解。エンダイブの葉をpH 5.5・6.5・7.5の緩衝液で破砕抽出すると、LとLOの合計に占めるLの割合は1%以下・4%・9%で、pH 7.5では抽出後の時間経過とともにLOが減りLが増えた。中性〜弱アルカリ性でLが生成し、弱酸性ではその生成が抑えられる"レタスについては、乳液の組成が同じであることまでが測定で、噛んで測った試験も官能試験も行われていない。著者はレタスでも同じ仕組みで緩和されると期待すると書くにとどめている。大会要旨の機器測定で食酢の効果が特に大きかった結果とは向きが合う。
範囲: 堀江2011の表1と考察。三重県津市のビニールハウスで栽培し収穫当日に分析したレタス
注記: レタスについては乳液の組成(表1)だけが測定で、緩和の効果は著者の期待。大会要旨(松本ら2021)の機器測定で食酢の低減効果が特に大きかった結果と向きが合う。
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ingredient-lettuce —has_perceived_bitterness_suppressed_by→ "ドレッシングの酸(著者の推定)。レタス(品種バークレー)の乳液もエンダイブと同じ lactucopicrin 15-oxalate(LO)と lactucopicrin(L)を含み、L は合計の0.6%にすぎない。咀嚼中に唾液と混ざって L が生成するところをドレッシングの酸が抑え、苦味が緩和されるとエンダイブ同様に期待される。レタス自体を噛んで測った試験や官能試験は行われていない"台所で試すなら、どこまで言えるか
今ある資料を台所の入口へ置き換えるなら、苦いレタスをそのまま食べる場合と、食酢を含むドレッシングを合わせた場合を、自分の皿で比べる余地がある。これは研究と同じ結果を約束する手順ではなく、資料から選べる試し方である。
まず少量を別の葉に合わせ、苦味だけでなく酸味や香りも含めて、自分が食べやすい方を選ぶ。研究が示した「弱まる」と、料理として「好みになる」は別の答えである。
仕組みから言えることが一つある。酸が効くのは、噛んでいるあいだに口の中に酸が一緒にあるときである。エンダイブの実験は、かけてから直ちに噛んでいる。酢を含むドレッシングを食べる直前にかける、あるいは酸味のあるものと一緒に噛む、という使い方がこの仕組みに沿う。油だけでも同じ作用が起きるかは、この研究では調べられていない(油だけの対照が無い)。
よく問われること
酢だけをかければよいか
食酢の結果は、レタスろ液を味認識装置で測ったものである。酢だけをかけたレタスを人が食べ、好ましさまで比べた結果ではない。酸味を含む全体の味は、自分の皿で確かめる必要がある。
水で洗えば苦味は抜けるか
ここで採用したレタスの研究は、水洗いの有無を人が比べた試験ではない。洗う時間や切り方を、苦味低減の手順として指定することはできない。
分かっていないこと
- 家庭で買うレタスの品種、葉と芯の違い、ドレッシングの種類と量を組み合わせた官能比較は、ここで採用した資料にはない。
- 大会要旨の詳しい試験条件も確認できない。食酢を含む味付けは候補にできるが、誰にでも同じ量で効く方法としてはまだ書けない。
関連する項目:レタス /エンダイブ
関連する主題ハブ: 苦味・渋味・えぐみ
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出典台帳: 出典台帳
この頁の引用のしかた
青木大(NIGAMI LAB)(2026). レタスが苦いとき、ドレッシングで変わるのか. https://nigamilab.com/notes/lettuce-dressing/
主張ごとの固定リンクは各カードの #clm-… です。データは CC BY 4.0、配布は データを使う。 データセットの DOI: 10.5281/zenodo.22739101