主題ハブ — 2026-10-20
緑茶は、低い湯温や水出しで淹れると苦くないのか
緑茶は低めの湯で淹れると苦くない、水出しならなおさら、とよく言われる。 では、湯温を変えて人が飲み比べた研究は何と答えているか。ここでは苦味と渋味を分けて読む(取り違えやすいので)。 この頁では、収録した研究を、茶の種類・湯温と時間・茶葉と湯の量・誰がどの尺度で評価したか、という条件と一緒に並べる。 そのうえで、同じ実験の中で確かめられたことと、研究のあいだの違いから考えられる説明の候補と、 この比較だけでは分けられないことを、分けて書く。
このページの内容(10 節)
この頁でわかること
- 同じ茶葉で湯温だけを変えて、人が苦味を点で評価した研究は、見つけた範囲では中国の龍井茶の研究だけで、低い湯温の方が有意に苦くなかったこと。
- 日本の緑茶では、湯温を下げると渋味が弱く感じられることまでは人で確かめられているが、苦味は湯温を変えて点で評価されていないこと。
- 苦味のもとになる成分(カフェイン・ガレート型カテキン)は、湯温が低いほど溶け出しにくいこと。ただし水出しでも、時間をかければ溶け出すこと。
- どの研究も液の濃さをそろえておらず、「薄くなったから苦くない」のか「苦い成分が選んで減ったから」なのかは分けられないこと。
収録した研究で言える範囲
- 同じ茶葉で湯温だけを変え、苦味と渋味を分けて人が点を付けた研究は、見つけた範囲では 1 本(中国の龍井茶)で、70 °C の苦味(3.13)は 100 °C(5.17)より有意に低かった。日本の緑茶では、湯温を下げると渋味が弱く感じられることまでは人で確かめられているが、湯温を変えて苦味を点で評価した研究は見つからなかった。 [表の行: Deng ら 2025 標準等級・苦味/久保ら 2014 かぶせ茶・渋味]
- だから「低い湯温なら苦くない」とまでは言えない。70 °C でも苦味の点は 0 ではなく、水出しでも時間をかければ苦味のもとになる成分は溶け出す。水出しの緑茶で苦味がよく選ばれた例もある(研究所の台帳の記録による)。 [表の行: Deng ら 2025 標準等級・苦味/堀江ら 2001 カフェイン(急須 2 分)/Orita ら 2023 長い水出しの総カテキン/Liu ら 2021 水出しでも苦い]
苦味の評価の一覧
人が苦味を評価した結果だけを抜き出した。「低い湯温・水出し」と「高い湯温」の値は、論文の表のまま。 「向き」は値の大小で、論文が差を認めていないものは「ほぼ同じ」とした。研究名を押すと、条件の詳しい表へ移る。
人が苦味を評価した結果だけを抜き出した一覧。値は論文の表のまま。研究ごとに尺度も測り方も違うので、行の中で比べ、行どうしは比べない。
| 研究 | 条件 | 測り方 | 低い湯温・水出し | 高い湯温 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| Deng ら 2025 | 標準等級: 70 °C 対 100 °C(どちらも 4 分) | 0〜10 点(9 名) | 3.13 | 5.17 | 高い湯温が高い 検定あり・有意 |
| Deng ら 2025 | 高級等級: 70 °C 対 100 °C | 0〜10 点(9 名) | 記載なし(本文は増加率だけ) | 70 °C より 33% 高い | 高い湯温が高い 差の検定なし |
| 米田・加藤 1994 | 水出し煎茶(2 °C)対 煎茶(80 °C)。別の製品、どちらも 0.5〜4 分の平均・1 煎目 | −2〜+2 の平均(15 名) | −1.73 | 0.53 | 高い湯温が高い 差の検定なし |
| Liu ら 2021 | 水出しの碧螺春 対 水出しの烏龍茶・紅茶 6 種の平均 | 選ばれた割合(63 名) | 苦味が選ばれる割合が高く、最後まで続いた | それより低い | 低い湯温・水出しが高い 差の検定なし |
研究ごとの条件と結果
研究ごとに、茶葉・湯温と時間・評価の条件と、測った結果を並べる。行の単位は「研究×測定結果」で、 苦味・渋味・成分は別の行にした。各行の下に、論文での位置と、 その行が「湯温を下げると苦味が下がるか」の比較に使えるかを、理由と一緒に書いた。 空欄にせず、「記載なし」(論文に書かれていない)、「読んでいない」、「該当しない」を書き分けている。
Deng ら 2025 官能だけ
Elucidating the effect of brewing temperature on the sensory quality of Longjing tea based on multi-scale molecular sensory science. Food Chemistry: X 28:102635 — doi:10.1016/j.fochx.2025.102635
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — Europe PMC の全文(2.2・3.1・3.2.1 節)で読んだ。図 1 の画像は見ていない
- 試料
- 龍井茶(中国の釜炒りの緑茶)の高級と標準の 2 等級
- 焙煎
- 該当しない(茶葉の加工は比べていない)
- 抽出
- 70・80・90・100 °C の湯で 4 分、1 煎。茶葉と湯の量は記載なし。45 °C に冷まして評価
- 誰が・どの尺度で
- 訓練した 9 名。0〜10 点。分散分析と Duncan の検定
| 測ったもの | 条件 | 低い湯温・水出し | 高い湯温 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 苦味の強さ(官能) | 標準等級: 70 °C 対 100 °C(どちらも 4 分) | 3.13 | 5.17 | 0〜10 点(9 名) | 高い湯温が高い 検定あり・有意 |
| 有意に高い(p < 0.05)。80・90 °C の値は図だけ 原典の位置: 3.1 節(図 1B) 湯温を下げると苦味が下がるかの比較に: 使える — 同じ茶葉・同じ時間で湯温だけを変え、訓練した評価者が苦味と渋味を分けて点を付け、検定がある。ただし龍井茶 1 種で、日本の蒸した緑茶ではない | |||||
| 渋味(官能) | 標準等級: 70 °C 対 100 °C | 2.07 | 4.13 | 0〜10 点(9 名) | 高い湯温が高い 検定あり・有意 |
| 有意に高い(p < 0.05) 原典の位置: 3.1 節(図 1B) 湯温を下げると苦味が下がるかの比較に: 使えない — 苦味でなく渋味(同じ研究で苦味も別に測っている) | |||||
| 苦味の強さ(官能) | 高級等級: 70 °C 対 100 °C | 記載なし(本文は増加率だけ) | 70 °C より 33% 高い | 0〜10 点(9 名) | 高い湯温が高い 差の検定なし |
| 高級等級の差が有意かは本文に書かれていない(図は読んでいない) 原典の位置: 3.2.1 節 湯温を下げると苦味が下がるかの比較に: 限られる — 増加率だけで、有意かが書かれていない | |||||
久保ら 2014 官能と成分
異なる条件で浸出した緑茶の渋味およびうま味の味覚センサーによる評価 (Evaluation of Astringency and Umami of Green Tea Infusions with Different Elution Conditions Using a Taste Sensor System). 日本食品科学工学会誌 (Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi) 61(5):192-198 — doi:10.3136/nskkk.61.192
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — J-STAGE の PDF の全文(方法 4、図 5、表 4)で読んだ。渋味の値は図から読んだ近い値
- 試料
- かぶせ茶(三重県産やぶきた、上級品と二番茶)
- 焙煎
- 該当しない
- 抽出
- 茶葉 25 g と水 1 L で静置。90・50・20 °C は 5 分、5 °C だけ 30 分。成分の分析は別に、茶葉 2 g・水 200 mL で淹れた
- 誰が・どの尺度で
- 茶業の関係者など 22 名。50 °C の液を 0 とした 5 段階(−2〜+2)。渋味とうま味だけを評価し、苦味は評価していない。条件どうしの差の検定は無い(渋味と成分の相関の検定はある)
| 測ったもの | 条件 | 低い湯温・水出し | 高い湯温 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 渋味(官能) | 20 °C・5 分 対 90 °C・5 分(50 °C を 0 とした相対値) | 約 −1.1 | 約 +1.6 | −2〜+2 の 5 段階(22 名) | 高い湯温が高い 差の検定なし |
| 条件ごとの検定は無い。5 °C・30 分は約 −1.0。苦味は評価していない 原典の位置: 図 5、pp.195–196 湯温を下げると苦味が下がるかの比較に: 使えない — 苦味は評価していない。渋味だけ | |||||
| カテキン類・タンニン | 20 °C・5 分 対 90 °C・5 分 | 0.11 | 0.73 | mM | 高い湯温が高い 差の検定なし |
| 0.11・0.73 は、官能用とは別に淹れた成分分析用の液(2 g・200 mL)の値。渋味の評価とガレート型カテキンの濃さの対数の r² = 0.94 は、かぶせ茶 B の 4 条件と別のかぶせ茶 C の 50 °C を合わせた 5 点 原典の位置: 表 4 湯温を下げると苦味が下がるかの比較に: 使えない — 成分の量で、人が感じる苦味は測っていない | |||||
米田・加藤 1994 官能と成分
各種製茶の煎出条件とカフェイン・タンニン溶出量及び味との関係. 調理科学 27(1):31-38 — doi:10.11402/cookeryscience1968.27.1_31
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — J-STAGE の PDF の全文(方法、表 1・5・6・7)で読んだ
- 試料
- 市販の京都宇治茶。水出し用の煎茶と、普通の煎茶は別の製品
- 焙煎
- 該当しない
- 抽出
- どちらも茶葉 3 g・水 80 mL で 0.5〜4 分。水出しは水温 2 °C、煎茶は 80 °C。3 煎まで
- 誰が・どの尺度で
- 15 名。苦味・渋味などを −2〜+2 で評価。官能の平均どうしの差の検定は無い(成分の分散分析と、苦味と成分の相関の検定はある)。それぞれの茶を単独で評価。カフェインは HPLC
| 測ったもの | 条件 | 低い湯温・水出し | 高い湯温 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 苦味の強さ(官能) | 水出し煎茶(2 °C)対 煎茶(80 °C)。別の製品、どちらも 0.5〜4 分の平均・1 煎目 | −1.73 | 0.53 | −2〜+2 の平均(15 名) | 高い湯温が高い 差の検定なし |
| 官能の平均どうしの差の検定は無い。煎茶では苦味がカフェインの濃さと相関し(r = 0.700、1% 水準)、タンニンとは有意でなかった(r = 0.498) 原典の位置: 表 5・6・7 湯温を下げると苦味が下がるかの比較に: 限られる — 人が苦味を評価した。ただし水出しと煎茶は別の製品で、水出しは 2 °C でわずか 0.5〜4 分、検定も無い | |||||
| 渋味(官能) | 水出し煎茶(2 °C)対 煎茶(80 °C)。別の製品、どちらも 0.5〜4 分の平均・1 煎目 | −1.67 | 0.66 | −2〜+2 の平均(15 名) | 高い湯温が高い 差の検定なし |
| 官能の平均どうしの差の検定は無い 原典の位置: 表 5 湯温を下げると苦味が下がるかの比較に: 使えない — 苦味でなく渋味 | |||||
| カフェイン | 水出し煎茶(2 °C)対 煎茶(80 °C)、1 煎目 2 分 | 2.53 | 31.96 | mg(80 mL あたり) | 高い湯温が高い 差の検定なし |
| 別の製品どうしで、検定は無い 原典の位置: 表 1 湯温を下げると苦味が下がるかの比較に: 使えない — 成分の量 | |||||
Liu ら 2021 官能だけ
Evaluation of Sensory Quality for Taiwanese Specialty Teas with Cold Infusion Using CATA and Temporal CATA by Taiwanese Consumers. Foods 10(10):2344 — doi:10.3390/foods10102344
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — 研究所の台帳の全文確認の記録による(この問いのために読み直してはいない)
- 試料
- 台湾の碧螺春(緑茶)と、烏龍茶 5 種・紅茶 1 種
- 焙煎
- 該当しない
- 抽出
- どれも水出し(4〜5 °C・6 時間)
- 誰が・どの尺度で
- 消費者 63 名。時間ごとに当てはまる感覚を選ぶ方法(TCATA)。強さの点数ではない
| 測ったもの | 条件 | 低い湯温・水出し | 高い湯温 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 苦味が目立つか(官能) | 水出しの碧螺春 対 水出しの烏龍茶・紅茶 6 種の平均 | 苦味が選ばれる割合が高く、最後まで続いた | それより低い | 選ばれた割合(63 名) | 低い湯温・水出しが高い 差の検定なし |
| 湯との比較ではない 原典の位置: 結果(TCATA) 湯温を下げると苦味が下がるかの比較に: 使えない — 湯と比べていない。水出しでも苦味が目立つ例として並べる | |||||
堀江ら 2001 成分だけ
茶主要成分の茶浸出液への溶出特性. 茶業研究報告 91:29-33 — doi:10.5979/cha.2001.91_29
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — J-STAGE の PDF の全文(表 2、図 1)で読んだ
- 試料
- やぶきたの一番茶と二番茶の荒茶(2000 年、静岡県金谷)
- 焙煎
- 該当しない
- 抽出
- 急須に荒茶 3 g、20・50・70・90 °C の水 200 mL で 2 分。別に、一番茶 1 g を 20・60・90 °C に保った 500 mL で 30 秒〜20 分かき混ぜる実験
- 誰が・どの尺度で
- 該当しない(成分の測定。20・50 °C の液は味が薄すぎたという付記だけ)
| 測ったもの | 条件 | 低い湯温・水出し | 高い湯温 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| カテキン類・タンニン | 一番茶: 20 °C 対 90 °C(急須で 2 分) | 21 | 377 | mg/L | 高い湯温が高い 差の検定なし |
| EGCG・ECG はどの温度でも溶け出す割合が最も低く、20 °C ではほとんど溶けない 原典の位置: 表 2・図 1 湯温を下げると苦味が下がるかの比較に: 使えない — 成分の量 | |||||
| カフェイン | 一番茶: 20 °C 対 90 °C(急須で 2 分) | 35 | 239 | mg/L | 高い湯温が高い 差の検定なし |
| 別の実験(一番茶 1 g を 20 °C に保った 500 mL でかき混ぜる)では、20 分で葉の中のカフェインの 70% を超えて溶けた 原典の位置: 表 2、実験 2 湯温を下げると苦味が下がるかの比較に: 使えない — 成分の量 | |||||
池田ら 1972 成分だけ
煎茶の浸出条件と可溶成分との関係 (Relation between Infusing Condition of Green Tea and Soluble Component). 茶業研究報告 (Chagyo Kenkyu Hokoku, Tea Research Journal) 37:69-78 — doi:10.5979/cha.1972.69
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — J-STAGE の PDF の全文(表 5・6)で読んだ
- 試料
- 上級(一番茶)と並級(二・三番茶の再製茶)の煎茶
- 焙煎
- 該当しない
- 抽出
- 茶葉 6 g に湯 180 mL、40・60・80・95 °C で 2〜10 分(500 mL の三角フラスコで温度を保つ)
- 誰が・どの尺度で
- 該当しない(成分の測定。人の評価は無い)
| 測ったもの | 条件 | 低い湯温・水出し | 高い湯温 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| カテキン類・タンニン | 上級煎茶: 40 °C 対 95 °C(2 分) | 1.63 | 8.39 | 茶葉に対する % | 高い湯温が高い 差の検定なし |
| 人の評価は無い。著者は成分量から「60 °C くらいの低温浸出」を勧める 原典の位置: 表 5 湯温を下げると苦味が下がるかの比較に: 使えない — 成分の量 | |||||
物部ら 2012 成分だけ
緑茶冷水(4℃)浸出液のカテキン浸出特性及び茶期・品種の異なる緑茶冷水浸出液がマクロファージ様細胞の貪食能へ与える影響. 茶業研究報告 114:29-36 — doi:10.5979/cha.2012.114_29
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — J-STAGE の PDF の全文(図 1)で読んだ。値は本文の言い方と図から読んだ近い値
- 試料
- やぶきたなどの緑茶(粉末にした茶葉)
- 焙煎
- 該当しない
- 抽出
- 茶葉 0.75 g に水 30 mL。冷水 4 °C で 60 分、熱水 100 °C で 5 分
- 誰が・どの尺度で
- 該当しない(成分の測定。人の評価は無い。ここで使った図 1A・B は 4・6・8 月摘みの粉末で、各 1 回の測定)
| 測ったもの | 条件 | 低い湯温・水出し | 高い湯温 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| カテキン類・タンニン | 4 °C・60 分 対 100 °C・5 分 | 熱水の約半分(本文の言い方。図からは約 20〜45%) | 基準 | mg/100 mL | 高い湯温が高い 差の検定なし |
| EGC は冷水と熱水でほぼ同じで、冷水の液は EGC の割合が高い 原典の位置: 図 1 湯温を下げると苦味が下がるかの比較に: 使えない — 成分の量(1 回の測定) | |||||
Orita ら 2023 成分だけ
Extraction Efficiency and Alpha-Glucosidase Inhibitory Activities of Green Tea Catechins by Different Infusion Methods. Foods 12(13):2611 — doi:10.3390/foods12132611
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — PMC の全文(方法、3.1 節)で読んだ
- 試料
- 鹿児島の一番茶の荒茶 12 試料
- 焙煎
- 該当しない
- 抽出
- 荒茶 1.0 g に水 50 mL。90 °C で 90 秒(最初の 10 秒だけ手でかき混ぜる)、または 25 °C で 24 時間かき混ぜる
- 誰が・どの尺度で
- 該当しない(成分の測定。人の評価は無い)
| 測ったもの | 条件 | 低い湯温・水出し | 高い湯温 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| カテキン類・タンニン | 25 °C・24 時間 対 90 °C・90 秒 | 4.36 | 2.97 | g/100 g(乾燥した葉) | 低い湯温・水出しが高い 検定あり・有意 |
| 表 3 では差は有意(p < 0.05)。ガレート型だけでは 1.57 対 1.36 で有意差は示されていない。本文と表 3 で標準偏差の値が食い違う 原典の位置: 表 3・3.1 節 湯温を下げると苦味が下がるかの比較に: 使えない — 成分の量 | |||||
実験の中で確かめられたこと
同じ研究の中で、同じ評価者が条件を変えて比べた結果だけを書く。
- 龍井茶の標準等級で、70 °C から 100 °C にすると、苦味は 3.13 から 5.17、渋味は 2.07 から 4.13 に有意に上がった(訓練した 9 名、0〜10 点、4 分)。高級等級は苦味が 33% 上がったとあるが、有意かは本文に書かれていない。 [表の行: Deng ら 2025 標準等級・苦味/Deng ら 2025 標準等級・渋味/Deng ら 2025 高級等級・苦味]
- かぶせ茶で、50 °C の液を基準にすると、渋味は 20 °C で約 −1.1、90 °C で約 +1.6 だった(22 名、条件どうしの差の検定は無い)。渋味の評価は、別に淹れた分析用の液のガレート型カテキンの濃さ(20 °C で 0.11、90 °C で 0.73 mM)とよく合っていた。苦味は評価していない。 [表の行: 久保ら 2014 かぶせ茶・渋味/久保ら 2014 かぶせ茶・ガレート型カテキン]
- 同じ茶葉を急須で 2 分淹れると、EGCG は 20 °C で 21、90 °C で 377 mg/L、カフェインは 35 と 239 mg/L だった。別の実験では、20 °C に保った水でかき混ぜても、20 分で葉の中のカフェインの 70% を超えて溶けた。 [表の行: 堀江ら 2001 EGCG(急須 2 分)/堀江ら 2001 カフェイン(急須 2 分)]
- 冷水(4 °C・60 分)の液の EGCG は熱水(100 °C・5 分)の約半分(図からは約 20〜45%)で、EGC は同じくらいだった。冷水の液は、EGC の割合が高い。 [表の行: 物部ら 2012 EGCG(冷水と熱水)]
- 長い水出し(25 °C・24 時間)は、総カテキンで熱湯の短時間(90 °C・90 秒)を有意に上回った(4.36 対 2.97 g/100 g)。ガレート型だけでは有意差は示されなかった(1.57 対 1.36)。 [表の行: Orita ら 2023 長い水出しの総カテキン]
結果の違いの説明の候補
研究のあいだ、または湯温のあいだで違う条件のうち、苦味の違いを説明しうるもの。 複数の条件が同時に違うので、どれが効いたかは分からない。ここに書くのは候補で、原因ではない。
- カフェイン。日本の煎茶では、苦味の点がカフェインの濃さと相関し(r = 0.700)、タンニンとは有意でなかった。湯温を下げるとカフェインの溶け出しも減るので、苦味が下がる理由の候補になる。 [表の行: 米田・加藤 1994 水出し・苦味/堀江ら 2001 カフェイン(急須 2 分)]
- ガレート型カテキン(EGCG など)。低い湯温では特に溶けにくく、渋味の評価とよく合った。苦味にどれだけ効くかは、ここで見た人の評価では分けていない。 [表の行: 堀江ら 2001 EGCG(急須 2 分)/久保ら 2014 かぶせ茶・ガレート型カテキン]
- 薄さ。ここで見た人の評価の研究は、どれも液の濃さをそろえていないので、低い湯温で苦味が下がったのが、液が全体に薄くなったためか、苦味のもとになる成分が選んで減ったためかは分からない。水出しを 0.5〜4 分で比べた研究は、カフェインがとても少なかった(2 分・1 煎目で 2.53 対 31.96 mg)。液全体の濃さは測っていない。 [表の行: 米田・加藤 1994 水出し・カフェイン/米田・加藤 1994 水出し・苦味/Deng ら 2025 標準等級・苦味]
分かっていないこと——この比較だけでは分けられないこと
- 日本の蒸した緑茶で湯温を変えたときの、人の苦味の点。見つけた範囲では、渋味とうま味の評価か、別の製品どうしの比較だけだった。 [表の行: 久保ら 2014 かぶせ茶・渋味/米田・加藤 1994 水出し・苦味]
- 湯温の効きと、茶の種類・製法の効き。苦味を点で測った湯温の研究は龍井茶だけで、日本の煎茶に同じ大きさで当てはまるかは分からない。 [表の行: Deng ら 2025 標準等級・苦味]
- 時間と湯温。水出しの結果は時間でも変わる(20 °C でもかき混ぜて 20 分でカフェインの大半が溶けた、24 時間の水出しは総カテキンで熱湯の短時間を上回った)。湯温だけの効きとは分けにくい。 [表の行: 堀江ら 2001 カフェイン(急須 2 分)/Orita ら 2023 長い水出しの総カテキン]
研究と行の数え方
根拠の行の数は、研究の数ではない。表の行・台帳の根拠の行・論文・研究グループを分けて数える。
- 表に入れた資料: 8 本。うち人が苦味を評価したのは 3 本で、ほかは別のもの(成分・におい)を測ったか、条件を考える材料として入れた。
- 表の行(研究×測定結果): 14 行。うち人が感じる苦味の行: 4 行。
- この表が拠っている研究所の台帳の根拠の行: 5 行。1 本の論文から複数の行を作っている。台帳の根拠の行が無い行は、同じ論文の別の表から取った値か、この問いのために新しく読んだ資料の値である。
- 人が苦味を評価した研究の、独立した研究グループの数: 3(同じ研究室の報告は 1 つと数えた)。
調べた範囲
この問いのために見た資料と、表に入れた・除いた理由、全文に当たれなかった資料を残す。 PubMed・Europe PMC・J-STAGE・CiNii で、緑茶の浸出温度・水出し・浸出時間と苦味・渋味・カテキン・カフェインを扱う研究を探し、研究所の台帳にある資料と合わせた。
| 資料 | 扱い | 理由 |
|---|---|---|
| Elucidating the effect of brewing temperature on the sensory quality of Longjing tea based on multi-scale molecular sensory science (2025) doi | 表に入れた | 同じ茶葉で湯温だけを変え、苦味と渋味を分けて人が評価し、検定がある。全文で読んだ |
| 異なる条件で浸出した緑茶の渋味およびうま味の味覚センサーによる評価 (Evaluation of Astringency and Umami of Green Tea Infusions with Different Elution Conditions Using a Taste Sensor System) (2014) doi | 表に入れた | かぶせ茶の湯温を変えて人が渋味を評価した。苦味は評価していない。全文で読んだ |
| 各種製茶の煎出条件とカフェイン・タンニン溶出量及び味との関係 (1994) doi | 表に入れた | 水出し(2 °C)と煎茶(80 °C)を人がそれぞれ単独で評価した。別の製品で、水出しは短時間。全文で読んだ |
| Evaluation of Sensory Quality for Taiwanese Specialty Teas with Cold Infusion Using CATA and Temporal CATA by Taiwanese Consumers (2021) doi | 表に入れた | 水出しの緑茶でも苦味がよく選ばれた例として。湯との比較ではない |
| 茶主要成分の茶浸出液への溶出特性 (2001) doi | 表に入れた | 同じ茶葉で湯温を変え、EGCG・カフェインなどの溶け出しを測った。全文で読んだ |
| 煎茶の浸出条件と可溶成分との関係 (Relation between Infusing Condition of Green Tea and Soluble Component) (1972) doi | 表に入れた | 湯温と時間を変えてタンニン・EGCG・カフェインを測った。全文で読んだ |
| 緑茶冷水(4℃)浸出液のカテキン浸出特性及び茶期・品種の異なる緑茶冷水浸出液がマクロファージ様細胞の貪食能へ与える影響 (2012) doi | 表に入れた | 冷水と熱水で EGCG と EGC を比べた。全文で読んだ |
| Extraction Efficiency and Alpha-Glucosidase Inhibitory Activities of Green Tea Catechins by Different Infusion Methods (2023) doi | 表に入れた | 長い水出しと熱湯の短時間でカテキンを比べた。全文で読んだ |
| Effect on the epigallocatechin gallate/epigallocatechin ratio in a green tea (Camellia sinensis L.) extract of different extraction temperatures and its effect on IgA production in mice (2010) doi | 除いた | 同じグループの同じ傾向の報告で、代表として 2012 年の報告を表に入れた(2010 年の報告は 4〜40 °C を 60 分、50〜100 °C を 2 分で比べ、3〜6 回の平均) |
| ‘やぶきた’二番茶の煎茶および釜炒り茶の冷水浸出液における化学成分の違い (2023) doi | 除いた | 冷水だけの比較で、熱湯との比較と人の評価が無い |
| Relation between Lixiviation Condition of Tea and Soluble Component. (1964) doi | 除いた | 人の評価は品質の総合判断(味は 100 °C が良好)で、苦味の強さではない |
| 茶の淹れ方による呈味の味認識装置による評価 (2013) doi | 除いた | 味覚センサーが中心で、苦味の値は報告されていない(人の評価はうま味・渋味の比較だけ)。5 °C だけ 10 分で時間がそろっていない |
| 水だし煎茶における浸出時間と嗜好性および溶出成分量との関係 (1999) doi | 除いた | 水出しの時間ごとの好みの順位で、苦味の強さも熱湯との比較も無い |
| Effects of different brewing conditions on catechin content and sensory acceptance in Turkish green tea infusions (2015) doi | 除いた | 受け入れやすさの点で、苦味の強さではない(全文は今回、確認の画面で止まり読めていない) |
| Effects of different types of water on the sensory and physicochemical properties of cold-brewed green tea (2026) doi | 除いた | 水の種類の比較で、湯温の比較ではない |
| Revealing the influence of top-brewing and bottom-brewing methods on the flavor of green tea based on the interaction between EGCG and aroma compounds (2026) doi | 除いた | 湯と茶葉を入れる順の比較で、人の評価は 85 °C だけ |
| Optimization of brewing conditions for Tieguanyin oolong tea by quadratic orthogonal regression design (2022) doi | 除いた | 烏龍茶で、苦味と渋味を 1 つの項目として評価した |
| 苦味が煎茶の濃さに及ぼす影響(ほか同じグループの大会要旨) (2019) doi | 除いた | 大会要旨で、淹れ方ごとの苦味の結果が書かれていない |
| Influence of steeping conditions (time, temperature, and particle size) on antioxidant properties and sensory attributes of some white and green teas. (2015) doi | 全文に当たれない | 要旨に湯温ごとの苦味の値が無く、全文は購読制 |
| The chemical basis of aroma/taste and color formation in green tea infusion during cold brewing revealed by metabolomics analysis. (2025) doi | 全文に当たれない | 水出しと 80 °C の比較。要旨に人の苦味の評価があるかが分からず、全文は購読制 |
| Effects of alternative steeping methods on composition, antioxidant property and colour of green, black and oolong tea infusions (2015) doi | 全文に当たれない | 成分と色の研究。全文は確認の画面で止まり読めていない |
図鑑で読む
- 緑茶 — この問いの飲みもの
- カフェイン — 煎茶の苦味の点と相関した成分
- エピガロカテキンガレート(EGCG) — 低い湯温で溶け出しにくいガレート型カテキン
- 茶のカテキン類 — 渋味と苦味の担い手の候補
- お茶の苦味 — 茶の苦味と渋味の担い手と淹れ方を束ねた主題ハブ
出典台帳
表の各研究の出典は、研究ごとの欄からたどれる。研究所の全体の出典は出典台帳にまとめている。
この頁の引用のしかた
青木大(NIGAMI LAB)(2026). 緑茶は、低い湯温や水出しで淹れると苦くないのか — 研究ごとの条件と結果. https://nigamilab.com/topics/green-tea-temperature/
主張ごとの固定リンクは各カードの #clm-… です。データは CC BY 4.0、配布は データを使う。 データセットの DOI: 10.5281/zenodo.22739101