主題ハブ — 2026-10-20
柑橘の皮の苦味は、ゆでこぼしや水さらしで下がるのか
マーマレードを作るとき、皮をゆでこぼし、水にさらし、白いワタを除く。苦味を抜くための下ごしらえとして、よく書かれている。 では、その下ごしらえで苦味が下がることを、研究はどこまで確かめているか。 ここでは、口に入れてすぐ苦いナリンギンと、加熱や時間で遅れて苦くなるとされるリモニン類を分けて読む。 この頁では、収録した研究を、果実・皮の部位・処理の回数と時間・誰がどう評価したか、という条件と一緒に並べる。 そのうえで、同じ実験の中で確かめられたことと、研究のあいだの違いから考えられる説明の候補と、 この比較だけでは分けられないことを、分けて書く。
このページの内容(10 節)
この頁でわかること
- ゆでこぼしや水さらしで、皮のナリンギンは大きく減ること。ある時間や回数で頭打ちになること。
- リモノイド(リモニン類の総量)は、水さらしでは抜けにくかったという測定があること。
- 探した範囲で、何もしない皮と並べて人が苦味を比べた研究はジャムの研究だけで、水だけで処理したジャムは何もしないジャムと同じくらい苦かったこと。
- ワタにはナリンギンが多いが、リモニン類はワタより外の皮と種に多いこと。ワタを除いたマーマレードの苦味を人が比べた研究は見つからなかったこと。
収録した研究で言える範囲
- ゆでこぼしや水さらしで、皮の苦味のもとになるナリンギンは大きく減る。夏みかんの外果皮は水さらし 2〜3 時間で 80〜85%、晩白柚の外果皮は 5 分ゆでて水を替えるのを 3 回(そのあと 1 時間水冷)で 66.2% が減った。けれども、探した範囲で、何もしない皮と並べて人が苦味を比べた研究はビターオレンジのジャムの 1 本だけで、水だけで処理したジャムは何もしないジャムと同じくらい苦いと書かれていた。 [表の行: 諸星・菅原 1971 水さらし・ナリンギン/森下・和田 1986 ゆでこぼし・外果皮のナリンギン/Lagha-Benamrouche ら 2018 水だけで抜いたジャム]
- 成分が減ることと、人が苦くないと感じることは、別に確かめる必要がある。リモノイド(リモニン類の総量)は水さらしでは抜けにくかったという測定があり、苦味の順がナリンギンの残りの順と合わなかった研究もある。 [表の行: 諸星・菅原 1973 リモノイドの抜け方/森下・和田 1986 皮の苦味の順位]
苦味の評価の一覧
人が苦味を評価した結果だけを抜き出した。「処理した皮」と「比べた相手」の値は、論文の表のまま。 「向き」は値の大小で、論文が差を認めていないものは「ほぼ同じ」とした。研究名を押すと、条件の詳しい表へ移る。
人が苦味を評価した結果だけを抜き出した一覧。値は論文の表のまま。研究ごとに尺度も測り方も違うので、行の中で比べ、行どうしは比べない。
| 研究 | 条件 | 測り方 | 処理した皮 | 比べた相手 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 森下・和田 1986 | 外果皮: 熱湯法 対 酵素の処理(何もしない皮は入っていない) | 順位の合計(小さいほど苦い、10 名) | 順位の合計 22(酵素より苦くない) | 順位の合計 13(酵素。最も苦い) | 比べた相手が高い 検定あり・一部の組だけ有意 |
| 諸星・菅原 1971 | 煮る時間・さらす時間を変えたマーマレード 7 種どうし(何もしない皮のマーマレードは無い) | 5 点法(20 名)。点の向きは記載なし | 2.70〜3.65 | 記載なし | 向きの記載なし 差の検定なし |
| Lagha-Benamrouche ら 2018 | 水だけで苦味を抜いたジャム 対 抜いていない苦いジャム | 苦味の順位(30 名) | 同じくらいの苦さ | —(基準) | ほぼ同じ 差の検定なし |
| Lagha-Benamrouche ら 2018 | 食塩水で苦味を抜いたジャム 対 抜いていない苦いジャム | 苦味の順位(30 名) | 苦味が下がった | —(基準) | 比べた相手が高い 検定あり・有意 |
研究ごとの条件と結果
研究ごとに、果実・皮の部位・処理・評価の条件と、測った結果を並べる。行の単位は「研究×測定結果」で、 ナリンギン・リモニン類・人の評価は別の行にした。各行の下に、論文での位置と、 その行が「下処理で皮の苦味が下がるか」の比較に使えるかを、理由と一緒に書いた。 空欄にせず、「記載なし」(論文に書かれていない)、「読んでいない」、「該当しない」を書き分けている。
森下・和田 1986 官能と成分
マーマレード加工における果皮の脱苦味の検討. 調理科学 19(4):330-334 — doi:10.11402/cookeryscience1968.19.4_330
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — J-STAGE の PDF の全文(第 1・3・6 表、第 2 図)で読んだ
- 試料
- 晩白柚(熊本県、1984 年 11 月)。外果皮(2×10 mm)と内果皮(ワタ、5 mm 角)を分けて各 2 g
- 焙煎
- 熱湯法: 9 倍量の水で 5 分ゆでて水を替える、を 3 回、そのあと 1 時間水で冷やす。酵素法: 0.1% ナリンギナーゼ(3 倍量)で 40 °C・2 時間。塩酸法: 1% 塩酸(9 倍量)に常温で 2 時間のあと、水洗い・熱湯法・水冷
- 抽出
- 処理した皮そのものを評価(マーマレードには仕上げていない)
- 誰が・どの尺度で
- 調理の研究室員 10 名。苦味の強い順に順位を付ける(順位の合計が小さいほど強い)。Kramer の検定。何もしない皮は官能に入っていない
| 測ったもの | 条件 | 処理した皮 | 比べた相手 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| ナリンギン(すぐ苦い) | 熱湯法(5 分×3 回、そのあと 1 時間水冷)対 何もしない皮。外果皮 | 46.7 | 138.0 | mg% | 比べた相手が高い 差の検定なし |
| 減った割合は 66.2%。外果皮は 2 回目まではほぼ同じで、3 回目でさらに減った 原典の位置: 第 1 表・第 2 図 下処理で皮の苦味が下がるかの比較に: 使えない — 成分の量で、人が感じる苦味は測っていない | |||||
| ナリンギン(すぐ苦い) | 熱湯法(5 分×3 回、そのあと 1 時間水冷)対 何もしない皮。内果皮(ワタ) | 163.0 | 388.3 | mg% | 比べた相手が高い 差の検定なし |
| 減った割合は 58.0%。ワタは 2 回で頭打ちになった(第 2 図の残りの割合は表の値と細かくは合わない) 原典の位置: 第 1 表・第 2 図 下処理で皮の苦味が下がるかの比較に: 使えない — 同上 | |||||
| リモニン類(遅れて苦い) | 熱湯法(5 分×3 回、そのあと 1 時間水冷)対 何もしない皮。外果皮 | 3.1 | 14.1 | ppm | 比べた相手が高い 差の検定なし |
| 減った割合は 78.0%。3 つの処理の中で最もよく減った(ワタは 14.8 から 3.5) 原典の位置: 第 3 表 下処理で皮の苦味が下がるかの比較に: 使えない — 同上 | |||||
| 苦味の強さ(官能) | 外果皮: 熱湯法 対 酵素の処理(何もしない皮は入っていない) | 順位の合計 22(酵素より苦くない) | 順位の合計 13(酵素。最も苦い) | 順位の合計(小さいほど苦い、10 名) | 比べた相手が高い 検定あり・一部の組だけ有意 |
| 本文が有意と書くのは酵素と塩酸の差だけで、熱湯法とほかの差の有意は書かれていない。著者は、苦味の順がナリンギンの残りの順と合わず、リモニンの残りと皮の硬さが効いていると推定した 原典の位置: 第 6 表 下処理で皮の苦味が下がるかの比較に: 限られる — 人が皮の苦味を比べたが、何もしない皮が入っておらず、熱湯法の差が有意かも書かれていない | |||||
諸星・菅原 1971 官能と成分
マーマレード作製中のナリンギン量の変化について. 調理科学 4(2):116-118 — doi:10.11402/cookeryscience1968.4.2_116
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — J-STAGE の PDF の全文(第 2 表と本文)で読んだ
- 試料
- 夏みかん(湯河原産)。外果皮(皮の外側約 3 分の 1)と、内白部(ワタ)・じょうのう(みじん切り)
- 焙煎
- 2% 食塩水・流水・たまり水に 30 分〜24 時間さらす(外果皮は 10 g 包で各 2 包。水の量・水温は記載なし)。外果皮を 15〜90 分煮る。マーマレードの試作 7 種(煮る時間とさらす時間を変えた)
- 抽出
- マーマレードの試作 7 種と市販 2 種を評価(本文は製品 10 種と書くが、表は 9 種)
- 誰が・どの尺度で
- 20 名(20 代)。5 点法で苦さ・硬さ・総合など。検定は無く、苦さの点の向き(高いほど苦いか)は書かれていない。ナリンギンはペーパークロマトグラフィーと蛍光
| 測ったもの | 条件 | 処理した皮 | 比べた相手 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| ナリンギン(すぐ苦い) | 水さらし 2〜3 時間 対 さらす前。外果皮と、内白部・じょうのう | 外果皮で 80〜85%、内白部・じょうのうで 60〜70% が抜けた | さらす前 | 抜けた割合 | 比べた相手が高い 差の検定なし |
| 3 時間以後はほぼ一定。2% 食塩水・流水・たまり水の差は小さい(検定は無い)。煮ると 15〜30 分で大きく減り、そのあとは一定 原典の位置: 第 2 表・本文 下処理で皮の苦味が下がるかの比較に: 使えない — 成分の量 | |||||
| 苦味の強さ(官能) | 煮る時間・さらす時間を変えたマーマレード 7 種どうし(何もしない皮のマーマレードは無い) | 2.70〜3.65 | 記載なし | 5 点法(20 名)。点の向きは記載なし | 向きの記載なし 差の検定なし |
| 検定は無い。著者は、2% 食塩水で 30 分煮て 1 時間さらすか、45〜60 分煮てさらさなくても、長い処理の従来品と苦味・硬さ・総合で変わらないとした。試作品のナリンギンは 60〜75 mg% で、市販品と大差なし 原典の位置: 本文・表 下処理で皮の苦味が下がるかの比較に: 限られる — 人がマーマレードの苦さを評価したが、何もしない皮の試料が無く、検定も点の向きも無い | |||||
| ナリンギン(すぐ苦い) | 内白部(ワタ)対 外果皮(何もしない皮) | 1105 | 436 | mg% | 処理した皮が高い 差の検定なし |
| ワタは外果皮の約 2.5 倍 原典の位置: 第 2 表 下処理で皮の苦味が下がるかの比較に: 使えない — 部位ごとの成分の量で、下処理の比較ではない | |||||
諸星・菅原 1973 成分だけ
マーマレード作製中のリモノイド量の変化について. 調理科学 6(1):46-48 — doi:10.11402/cookeryscience1968.6.1_46
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — 研究所の台帳の全文確認の記録による(この問いのために本文の数字を読み直してはいない)
- 試料
- 夏みかん(愛媛産)。外果皮・内白部(ワタ)・じょうのう・種
- 焙煎
- 2% 食塩水またはたまり水に 1〜24 時間さらす。15〜90 分煮る
- 抽出
- 該当しない(成分の測定)
- 誰が・どの尺度で
- 該当しない(人の評価は無い)。リモノイドの総量を、リモニンを標準にした発色法で測った(リモニン単独の量ではない)
| 測ったもの | 条件 | 処理した皮 | 比べた相手 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| リモニン類(遅れて苦い) | 外果皮のリモノイド(総量): 2% 食塩水に 3 時間 対 たまり水に 3 時間 | 約 25% が抜けた | ほとんど抜けない(12 時間で食塩水並み) | 抜けた割合 | 処理した皮が高い 差の検定なし |
| 12 時間ではどちらも約 25% が抜けた。煮ると約 30% が抜けた(煮る時間は本文で 30〜45 分、要約で 30〜40 分)。リモノイドはワタ(1.00 mg%)より外果皮(3.38 mg%)と種(8.88 mg%)に多い 原典の位置: 表 1・図 3〜5(台帳の記録) 下処理で皮の苦味が下がるかの比較に: 使えない — 成分の量 | |||||
Lagha-Benamrouche ら 2018 官能だけ
Desamerization of Bitter Jam: Biochemical and Sensory Quality. Journal of Food Quality — doi:10.1155/2018/8178059
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — 研究所の台帳の全文確認の記録と、この問いのために読んだ要旨による(本文は確認の画面で止まり、読み直していない)
- 試料
- ビターオレンジ(Citrus aurantium)の中果皮(ワタ)を使うジャム
- 焙煎
- 水だけで苦味を抜く処理と、食塩水で抜く処理(浸ける・煮るを含む工程。回数・時間・塩の濃さはこの問いでは読み直していない)
- 抽出
- ジャムに仕上げて評価
- 誰が・どの尺度で
- 訓練した 30 名が苦味を順位で評価(研究所の台帳の記録。この問いのために読んだ要旨には人数・方法の記載なし)
| 測ったもの | 条件 | 処理した皮 | 比べた相手 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 苦味の強さ(官能) | 水だけで苦味を抜いたジャム 対 抜いていない苦いジャム | 同じくらいの苦さ | —(基準) | 苦味の順位(30 名) | ほぼ同じ 差の検定なし |
| 要旨は「同じ苦さ」と書く(有意差の表現は要旨に無い) 原典の位置: 要旨 下処理で皮の苦味が下がるかの比較に: 限られる — 何もしないジャムと並べて人が比べた、見つけた範囲で唯一の研究。ただしこの問いでは本文を読み直せず、要旨と台帳の記録による | |||||
| 苦味の強さ(官能) | 食塩水で苦味を抜いたジャム 対 抜いていない苦いジャム | 苦味が下がった | —(基準) | 苦味の順位(30 名) | 比べた相手が高い 検定あり・有意 |
| 要旨は、食塩が苦味を有意に下げたと書く。苦味を抜くと、酸・糖・ビタミン C なども減った 原典の位置: 要旨(台帳の記録) 下処理で皮の苦味が下がるかの比較に: 限られる — 同上 | |||||
森下 1994 成分だけ
Effect on the Taste and Flavor of Marmalade by Combining Citrus Fruits. Journal of Home Economics of Japan 45(8):709-712 — doi:10.11428/jhej1987.45.709
- 原文の確認の深さ
- 全文で確認 — J-STAGE の PDF の全文(表 1、図 1)で読んだ
- 試料
- ユズ(高知県の加工業者から)の皮
- 焙煎
- 9 倍量の水に 2 時間浸け、そのあと煮る(煮る時間は方法の節で 5 分、表 1 と図 1 の注で 15 分と、本文の中で合わない)
- 抽出
- 該当しない(成分の測定。マーマレードの官能は果実どうしの比較で、下処理の比較ではない)
- 誰が・どの尺度で
- 該当しない(下処理の比較での人の評価は無い)。ナリンギンは HPLC
| 測ったもの | 条件 | 処理した皮 | 比べた相手 | 単位 | 向き・検定 |
|---|---|---|---|---|---|
| ナリンギン(すぐ苦い) | ユズの皮: 水に 2 時間 対 生の皮 | 14.02 | 18.22 | mg% | 比べた相手が高い 差の検定なし |
| 約 23% 減 原典の位置: 表 1 下処理で皮の苦味が下がるかの比較に: 使えない — 成分の量 | |||||
| ナリンギン(すぐ苦い) | ユズの皮: 水に 2 時間のあと煮る 対 生の皮 | 4.38 | 18.22 | mg% | 比べた相手が高い 差の検定なし |
| 約 76% 減。煮る時間は本文の中で 5 分と 15 分が食い違う。著者は、ナリンギンは苦味を感じる閾値(8 mg%)より低く、マーマレードの苦味はノミリンによると推定した。同じ処理でリモニンは処理前の 70% に下がった 原典の位置: 表 1 下処理で皮の苦味が下がるかの比較に: 使えない — 成分の量 | |||||
| リモニン類(遅れて苦い) | ユズの皮: 水に 2 時間のあと煮る 対 比べた値(本文の言い方) | 15.8 | 5.4 | ppm | 処理した皮が高い 差の検定なし |
| 本文は、加熱でノミリンが増えたと書く。ただし図 1 に処理前の皮の値は無く、5.4 は果汁の棒の高さに近いので、何と比べた値かは確かでない 原典の位置: 本文 p.710・図 1 下処理で皮の苦味が下がるかの比較に: 使えない — 成分の量で、比べた値も確かでない | |||||
実験の中で確かめられたこと
同じ研究の中で、同じ評価者が条件を変えて比べた結果だけを書く。
- 晩白柚の皮を 5 分ゆでて水を替えるのを 3 回(そのあと 1 時間水冷)すると、ナリンギンは外果皮で 138.0 から 46.7、ワタで 388.3 から 163.0 mg% に、リモニンは外果皮で 14.1 から 3.1 ppm に減った。ワタのナリンギンは 2 回で頭打ちになった。 [表の行: 森下・和田 1986 ゆでこぼし・外果皮のナリンギン/森下・和田 1986 ゆでこぼし・ワタのナリンギン/森下・和田 1986 ゆでこぼし・外果皮のリモニン]
- 同じ研究で、処理した皮の苦味を 10 名が順位で比べると、酵素で処理した皮が最も苦かった(順位の合計 13、熱湯法は 22)。著者は、苦味の順がナリンギンの残りの順と合わないとした。何もしない皮は比べていない。 [表の行: 森下・和田 1986 皮の苦味の順位]
- 夏みかんの皮を水にさらすと、ナリンギンは 2〜3 時間で外果皮の 80〜85%、内白部・じょうのうの 60〜70% が抜け、そのあとはほぼ一定だった。食塩水・流水・たまり水の差は小さかった(検定は無い)。 [表の行: 諸星・菅原 1971 水さらし・ナリンギン]
- 夏みかんの外果皮のリモノイド(総量)は、たまり水に 3 時間ではほとんど抜けず、2% 食塩水では約 25%、煮ると約 30% が抜けた(人の評価は無い)。 [表の行: 諸星・菅原 1973 リモノイドの抜け方]
- ビターオレンジのワタのジャムで、水だけで苦味を抜いたジャムは抜いていないジャムと同じくらい苦く、食塩水で抜いたジャムは苦味が有意に下がった(要旨と研究所の台帳の記録による)。 [表の行: Lagha-Benamrouche ら 2018 水だけで抜いたジャム/Lagha-Benamrouche ら 2018 食塩水で抜いたジャム]
- ユズの皮のナリンギンは、水に 2 時間で 18.22 から 14.02、そのあと煮ると 4.38 mg% に減った。 [表の行: 森下 1994 水浸け・ユズのナリンギン/森下 1994 煮たユズのナリンギン]
結果の違いの説明の候補
研究のあいだ、または処理のあいだで違う条件のうち、苦味の違いを説明しうるもの。 複数の条件が同時に違うので、どれが効いたかは分からない。ここに書くのは候補で、原因ではない。
- リモニン類。ナリンギンが減っても、リモニン類が残れば苦味は残りうる。水さらしでは抜けにくいという測定と、ゆでこぼしでよく抜けたという測定の両方があり、煮たユズの皮でノミリンが増えたという報告もある(比べた値は確かでない)。 [表の行: 諸星・菅原 1973 リモノイドの抜け方/森下・和田 1986 ゆでこぼし・外果皮のリモニン/森下 1994 煮たユズのノミリン]
- 塩。食塩水で抜いたジャムは苦味が下がり、水だけで抜いたジャムは下がらなかったと要旨は書く。塩でよく抜けたのか、残った塩味で感じにくくなったのかは、要旨からは分からない。 [表の行: Lagha-Benamrouche ら 2018 食塩水で抜いたジャム/Lagha-Benamrouche ら 2018 水だけで抜いたジャム]
- ワタを除くこと。ナリンギンはワタに外果皮の約 2.5 倍あるので、ワタを除くとナリンギンは減ると考えられる(部位ごとの濃さからの推論で、除く前後を測った実験ではない)。ただしリモノイドはワタより外果皮と種に多く、探した範囲では、ワタを除いたマーマレードの苦味を人が比べた研究は見つからなかった。 [表の行: 諸星・菅原 1971 部位ごとのナリンギン/諸星・菅原 1973 リモノイドの抜け方]
- 皮の硬さ。苦味の順がナリンギンの残りと合わなかった研究で、著者は皮の硬さも効いていると推定した。硬さそのものは測っているが、硬さが苦味の差を生んだかは分けて確かめていない。 [表の行: 森下・和田 1986 皮の苦味の順位]
分かっていないこと——この比較だけでは分けられないこと
- 何もしない皮と比べて、人が感じる苦味がどれだけ下がるか。この表の人の評価の多くは処理どうしの比較で、何もしない皮と並べたのはジャムの 1 本だけだった。 [表の行: 森下・和田 1986 皮の苦味の順位/諸星・菅原 1971 マーマレードの苦さ/Lagha-Benamrouche ら 2018 水だけで抜いたジャム]
- ゆでこぼしの回数の効き。成分ではワタが 2 回で頭打ち、外果皮は 3 回目でさらに減ったが、探した範囲では、回数を変えて人が苦味を比べた研究は見つからなかった。 [表の行: 森下・和田 1986 ゆでこぼし・外果皮のナリンギン/森下・和田 1986 ゆでこぼし・ワタのナリンギン]
- 果実の種類の違い。人が苦味を評価した研究は晩白柚・夏みかん・ビターオレンジと別々の果実で、人が感じる苦味への下処理の効きが果実によって違うかは分けられない(成分の減り方は、ユズ・小夏・キンカン・ネーブルを同じ表で比べた研究がある)。 [表の行: 森下・和田 1986 皮の苦味の順位/諸星・菅原 1971 マーマレードの苦さ/Lagha-Benamrouche ら 2018 水だけで抜いたジャム/森下 1994 煮たユズのナリンギン]
研究と行の数え方
根拠の行の数は、研究の数ではない。表の行・台帳の根拠の行・論文・研究グループを分けて数える。
- 表に入れた資料: 5 本。うち人が苦味を評価したのは 3 本で、ほかは別のもの(成分・におい)を測ったか、条件を考える材料として入れた。
- 表の行(研究×測定結果): 13 行。うち人が感じる苦味の行: 4 行。
- この表が拠っている研究所の台帳の根拠の行: 6 行。1 本の論文から複数の行を作っている。台帳の根拠の行が無い行は、同じ論文の別の表から取った値か、この問いのために新しく読んだ資料の値である。
- 人が苦味を評価した研究の、独立した研究グループの数: 3(同じ研究室の報告は 1 つと数えた)。
調べた範囲
この問いのために見た資料と、表に入れた・除いた理由、全文に当たれなかった資料を残す。 PubMed・J-STAGE・CiNii で、柑橘の皮・マーマレード・ピールの下処理(ゆでこぼし・水さらし・食塩水・ワタを除く)と苦味・ナリンギン・リモニンを扱う研究を探し、研究所の台帳にある資料と合わせた。
| 資料 | 扱い | 理由 |
|---|---|---|
| マーマレード加工における果皮の脱苦味の検討 (1986) doi | 表に入れた | ゆでこぼしなど 3 つの処理で、皮のナリンギン・リモニンと人の苦味の順位を測った。全文で読んだ |
| マーマレード作製中のナリンギン量の変化について (1971) doi | 表に入れた | 水さらし・煮る時間とナリンギン、マーマレードの官能。全文で読んだ |
| マーマレード作製中のリモノイド量の変化について (1973) doi | 表に入れた | 水さらし・食塩水・煮るとリモノイド。台帳の全文確認の記録による |
| Desamerization of Bitter Jam: Biochemical and Sensory Quality (2018) doi | 表に入れた | 何もしないジャムと並べて人が苦味を比べた唯一の研究。本文はこの問いでは確認の画面で止まり、要旨と台帳の記録による |
| Effect on the Taste and Flavor of Marmalade by Combining Citrus Fruits (1994) doi | 表に入れた | ユズの皮の水浸け・煮るとナリンギン。全文で読んだ |
| 不溶性ナリンギナーゼによるバンペイユ果皮中のナリンギン濃度の変化 (1986) doi | 除いた | 酵素の処理どうしの比較で、家庭の下処理ではない |
| カンサン・オレンジの皮の苦味除去(ベトナム語の論文) (2023) doi | 除いた | 水酸化ナトリウムやミョウバンを使う処理で、人の評価は処理どうしの比較(何もしない皮・水だけの皮は官能に入っていない) |
| 高圧力を利用した柑橘マーマレードに関する研究 (2014) | 除いた | 苦味抜きの下処理をしておらず、高圧と加熱の比較 |
| 高圧力を利用したレモンマーマレードの製造 (2015) doi | 除いた | 高圧と加熱の比較で、下処理の比較ではない |
| ブンタン果皮煮沸液中の苦味成分の回収 (1995) doi | 除いた | 煮た湯にナリンギンとリモノイドが出ていることは示すが、皮に残った量を測っていない |
| Assessment of different debittering techniques to valorize orange peel (2023) doi | 全文に当たれない | 塩水・炭酸ナトリウム・発酵・砂糖がけを比べた研究。全文は購読制で、要旨に何もしない皮との比較の値が無い |
| ナツミカン果実の凍結による苦味の増大について (1976) doi | 除いた | 果肉の薄皮の話で、外の皮やワタの下処理ではない |
図鑑で読む
- ナリンギン — 口に入れてすぐ苦い、皮とワタに多い成分
- リモニン — 加熱や時間で遅れて苦くなる成分
- ユズの皮/夏みかん/晩白柚 — この問いで調べられた果実
- 柑橘の苦味 — 柑橘の苦味の担い手と加工を束ねた主題ハブ
出典台帳
表の各研究の出典は、研究ごとの欄からたどれる。研究所の全体の出典は出典台帳にまとめている。
この頁の引用のしかた
青木大(NIGAMI LAB)(2026). 柑橘の皮の苦味は、ゆでこぼしや水さらしで下がるのか — 研究ごとの条件と結果. https://nigamilab.com/topics/citrus-peel-prep/
主張ごとの固定リンクは各カードの #clm-… です。データは CC BY 4.0、配布は データを使う。 データセットの DOI: 10.5281/zenodo.22739101