加工・条件
野菜の茹で加熱
boiling of vegetables
野菜の茹で加熱は、野菜を沸騰水で加熱する家庭調理。水溶性成分の溶出過程として働く。
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大鍋の沸騰した湯の中でジャガイモが茹でられている場面。野菜を沸騰水で加熱する家庭調理の実施場面を示す。
写っているもの: Solanum tuberosum(ジャガイモ)を沸騰水で加熱する工程部位・状態: 鍋の中で沸騰する湯にジャガイモが浸かっている場面
写真: benjgibbs/ CC BY 2.0/ 原画像/ 台帳の原画像
写真の範囲と来歴
被写体の確認: 原典の記載による同定。
掲載画像: Wikimedia Commons の原寸ファイル。苦味研究所では切り抜き・色調変更なし。 表示用には幅1200px上限のWebPを配信し、台帳の原画像は上のリンクから確認できます。
加工・条件 / process-vegetable-boiling
このページの内容(7 節)
苦味を読む
野菜を沸騰した湯で加熱する茹で調理は、水に溶けやすい成分を溶け出させる過程として働く。ここで溶け出す成分の一つがグルコシノレートで、特定のグルコシノレートは苦味を与えることが知られている。ブロッコリー、芽キャベツ、カリフラワー、グリーンキャベツを対象にした研究では、蒸す、電子レンジにかける、炒めるといった調理法では主要なグルコシノレート7種に有意な減少が見られなかったのに対し、茹でた場合ははっきりとした減少が確認された。国産ブロッコリーを使った別の研究でも、蒸気や過熱水蒸気、真空調理では中心温度95度まで加熱してもグルコシノレートの損失は生じず、茹でに特有の現象であることを支える結果が得られている。
茹でによってグルコシノレートが減る仕組みについては、研究間で見方が分かれている。ある研究では、失われた量のおよそ9割が茹で汁の中から回収されており、湯へ溶け出す浸出が主な仕組みだと解釈されている。一方、国産ブロッコリーを使った別の研究では、茹で汁から回収された量は脂肪族のグルコシノレートでおよそ7%、インドール系でおよそ18〜20%にとどまり、加熱後の野菜と茹で汁を合わせても加熱前の含量に届かなかったという。この研究の著者らは、浸出だけでなく熱による分解も関わっていると論じている。茹でると減るという現象そのものは両方の研究で一致しているが、その仕組みについては決着していない。
カリフラワー小房と4 mm厚のニンジン輪切りを各300 g、無塩の沸騰水2 Lで段階的に茹でた2020年の研究では、複数の機器測定値をまとめる主成分分析で、10分茹で以後の試料が電子舌の苦味・酸味・収れん味変数と結び付いた。これは水抽出物を人工脂質膜センサーで測った機器応答で、人が感じた苦味の増加や、その差の有意性を示す官能試験ではない。
ホウレンソウを重量の5、7、10、20倍の1%食塩水で1分茹で、計5分水にさらした研究では、女性12~14名の色、風味、歯ごたえ、えぐ味、総合評価に水量間の有意差はなかった。春収穫試料のシュウ酸残存量は5倍水で生の約61%、20倍水で約45%だったが、この違いがあっても、えぐ味の官能評価に有意差はなかった。化学量の差が、そのまま感覚差になるとは限らない例である。
5~6歳児82名がブロッコリーとカリフラワーを評価した研究の公開抄録では、茹でた試料は蒸した試料より風味と味が弱かったが、全体的な受容性には差がなかった。2~14分にわたる3段階の加熱時間では、中間の加熱時間が短時間・長時間より好まれた。味の強さと好ましさは別の尺度であり、この結果も苦味だけを比べたものではない。
この説明の根拠
Effect of storage, processing and cooking on glucosinolate content of Brassica vegetables
この本文で確認した範囲: 調理法別のグルコシノレート有意減少・非減少の結果を確認した/茹で汁への約9割回収という浸出主体の解釈を確認した
Taste and Flavor Perceptions of Glucosinolates, Isothiocyanates, and Related Compounds
この本文で確認した範囲: compound-glucosinolates brief内の根拠。特定グルコシノレートが苦味を与えるとのレビュー記述を確認した
この本文で確認した範囲: 蒸気・過熱水蒸気・真空調理で損失が生じなかった結果を確認した/茹で汁回収率が7〜20%にとどまり分解関与を論じた結果を確認した
この本文で確認した範囲: 試料の形・量、水量、加熱時間、複数機器値をまとめる主成分分析での電子舌変数との結び付き、および人官能・有意差でない限定に使用
ゆで水量の違いがホウレンソウの食味やシュウ酸ならびにカリウム含量に及ぼす影響
この本文で確認した範囲: 5~20倍水、1%食塩、1分加熱と5分水さらし、女性12~14名、5官能項目に有意差なしという条件に使用/春収穫試料のシュウ酸残存率、化学量の違いがあってもえぐ味官能に有意差なしという分離に使用。約100 mg%の原文値はevidenceにのみ保持
Cooking time but not cooking method affects children’s acceptance of Brassica vegetables
この本文で確認した範囲: 公開抄録にある5~6歳児82名、2野菜、茹で・蒸し、3段階の加熱時間、風味・味の強度と全体的受容性の分離、苦味単独でない限定に使用
構造化された主張 — 節を開くと、主張ごとの確度・根拠・限界が読めます
感覚(3)
範囲: Burattiら2020、別日に行った2試験、Taste-Sensing System SA 402Bによる水抽出物の重複測定とPCA
注記: 人が味わった官能試験ではない。PCA上の特徴づけであり、苦味の有意な増加量や一般の野菜への効果を示さない。
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process-vegetable-boiling —has_sensory_response→ "カリフラワー小房とニンジン輪切り各300 gを無塩沸騰水2 Lで段階的に茹でた試験では、10分以後の試料が電子舌の苦味・酸味・収れん味変数と結び付くPCA配置を示した"範囲: 和泉ら2005、19~50歳代の女子学生・女性教職員12~14名、1%食塩水、投入後1分加熱、水さらし計5分、5点評価
注記: 苦味尺度ではなく「えぐ味」。低下は有意差でなく傾向で、季節を越えた一般化をしない。
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process-vegetable-boiling —has_sensory_response→ "春・秋のホウレンソウを重量の5、7、10、20倍の湯で茹でた官能試験では、水量間で色、風味、歯ごたえ、えぐ味、総合評価の有意差はなく、風味と総合評価は水量が多いほど低下する傾向だった"範囲: Poelmanら2013、2野菜×茹で・蒸し×3加熱時間(2~14分)の6調製、児童の好ましさ評価と訓練記述パネル
注記: 公開抄録だけの確認。苦味単独の強度でなく、風味・味の総合強度と受容性。中間時間の具体値や個別野菜の全条件は本文未確認。
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process-vegetable-boiling —has_sensory_response→ "5~6歳児82名がブロッコリーとカリフラワーを評価した研究の公開抄録では、茹で試料は蒸し試料より風味と味の強度が低かったが、全体的な受容性に差はなく、中間の加熱時間が短時間・長時間より好まれた"加工・調理でどう変わる(3)
範囲: ブロッコリー・芽キャベツ・カリフラワー・グリーンキャベツ。LC-MS/MS で主要グルコシノレート7種を定量
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process-vegetable-boiling —reduces→ compound-glucosinolates範囲: アブラナ科野菜の加熱実験(素材・切り方・到達温度の差が乖離に寄与しうる)
注記: 現象(茹でると減る)は両研究一致。機構のみ係争中。
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process-vegetable-boiling —has_currently_proposed_mechanisms→ "茹でによるグルコシノレート損失の機構: 浸出主体(失われた分の約9割を茹で水から回収)と、熱分解の関与(茹で水回収率が脂肪族で約7%・インドール系で18–20%にとどまり合計が100%に届かない)が研究間で対立"範囲: 和泉ら2005、2003年5月仙台市収穫「アルタイル」、HPLC分析6反復と12~14名官能評価
注記: 化学量の差をそのまま知覚差へ置き換えられない例。苦味の測定ではない。
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process-vegetable-boiling —has_composition→ "春収穫ホウレンソウのシュウ酸残存量は5倍水で生の約61%、20倍水で約45%だったが、両条件の遊離シュウ酸量に約100 mg%の差があっても、えぐ味の官能評価に差はなかった"