化合物群
シクロデキストリン類
cyclodextrins
シクロデキストリン類は、ホスト-ゲスト包接複合体を形成する環状オリゴ糖(通常はグルコース6・7・8単位のα-、β-、γ-CD に加え、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどの置換誘導体)。医薬品では可溶化剤・安定化剤・苦味マスキング用賦形剤として用いられる。
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β-シクロデキストリンの実物サンプル。構造図ではなく、化合物のサンプルを撮影した実写真。
写っているもの: 該当なし(生物ではなく化合物のサンプル)部位・状態: 粉末サンプル(実物)
写真: Materialscientist/ CC BY-SA 4.0/ 原画像/ 台帳の原画像
写真の範囲と来歴
被写体の確認: 原典の記載による同定。
掲載画像: Wikimedia Commons の原寸ファイル。苦味研究所では切り抜き・色調変更なし。 表示用には幅1200px上限のWebPを配信し、台帳の原画像は上のリンクから確認できます。
化合物群 / compound-class-cyclodextrins
このページの内容(7 節)
苦味を読む
シクロデキストリンは、グルコースが環状につながったオリゴ糖で、内部にできる空洞にほかの分子を取り込む「ホスト-ゲスト複合体」を作る性質を持つ。ふつうはグルコース6・7・8単位からなるα-、β-、γ-シクロデキストリンと、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンのような置換型の誘導体があり、医薬品では可溶化剤や安定化剤のほか、苦味をやわらげるための添加物(賦形剤)として使われている。苦味を持つ分子をこの空洞に取り込んで包み込むことで、味蕾に届く遊離の薬物や成分の濃度を下げ、感じる苦味を弱めるという仕組みである。
ニガウリ(ゴーヤ)のジュースにβ-シクロデキストリンを0.25-2%加えた研究では、1.5%添加のジュースが、対照(3.8 +/- 0.7)に比べもっとも高い官能受容性スコア(7.7 +/- 0.3)を示し、NMRやFTIRなどの解析はモモルジコシド類という苦味成分をβ-シクロデキストリンが包接複合体として取り込んでいることを示した。別の研究グループはニガウリ抽出物で苦味強度そのものを訓練パネルに評定させ、β-シクロデキストリンをわずか0.25%加えただけで苦味がおよそ33%低下し、0.75%や1%を加えると90%を超えて低下したと報告している。これは比較対象として使われたカルボキシメチルセルロース0.6%添加での19%の低下よりも大きな効果だった。
医薬品の苦味マスキングでは、シクロデキストリンの種類とモル比によって効果に大きな差が出ることも報告されている。フルオキセチンをβ-シクロデキストリンと複合体化させたところ、非複合体のフルオキセチンをボランティアが苦い・とても苦いと評価したのに対し複合体化した薬は無味とされた例や、カプトプリルをβ-シクロデキストリンとモル比1:2で複合体化させた口腔内崩壊錠が、金属的な焼けつく風味だった非複合体の錠剤より好ましく評価された例がある一方、スピロノラクトンをヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと複合体化させても味は改善しなかったという報告もある。セチリジンでは、β-シクロデキストリンとの1:5溶液は多くの評価者が苦味なしか軽い苦味と答えたが、同じ比率のγ-シクロデキストリンの溶液は大半が極めて苦いと答えており、同じ薬でもどのシクロデキストリンを選ぶかで結果が変わることを示している。
プロプラノロールという薬を使った研究では、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン単独を0、プロプラノロール単独を10とする味覚センサー(電子舌)のスケールで、1:1のモル比で複合体化した製剤の苦味スコアは8.5(15%の低減)、1:2では7.3(およそ30%の低減)だったと報告されている。ただしこの測定はヒトの官能パネルを伴わない機器測定のみであり、別の総説が引用する規制当局の報告では、同じプロプラノロールの市販小児用製剤(シクロデキストリンとは異なる製剤法)の電子舌測定でおよそ80%のマスキング効果が示されたともされ、数字の単純な比較はできないとされている。シクロデキストリンによる苦味マスキングは、化合物ごと、シクロデキストリンの種類ごとに個別に確かめる必要がある技術だと言える。
この説明の根拠
Review of Applications of Cyclodextrins as Taste-Masking Excipients for Pharmaceutical Purposes
この本文で確認した範囲: 包接複合体化による遊離薬物濃度低下という一般機構の記述を確認/フルオキセチンとカプトプリルでの成功例の評点を確認/スピロノラクトンで味が改善しなかった例を確認/セチリジンでβ-CDとγ-CDの結果が分かれた記述を確認
この本文で確認した範囲: 1.5%添加時の受容性スコアと包接複合体形成の解析を確認
この本文で確認した範囲: 苦味強度そのものの低減率とCMCとの比較を確認
この本文で確認した範囲: 電子舌によるモル比別の苦味スコアと低減率を確認
この本文で確認した範囲: 市販製剤の約80%マスキングという文脈情報を確認
構造化された主張 — 節を開くと、主張ごとの確度・根拠・限界が読めます
感覚(2)
範囲: 0.2% w/v プロプラノロール水溶液。Insent SA 402B 味覚センシングシステム、センサー4本、各サンプル2回測定。ヒトパネルなし
注記: 機器測定のみ。アンカーの取り方(薬物単独 = 10)により、割合は製剤化前の薬物に対する相対値であって絶対的な苦味ではない。
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compound-propranolol —has_e_tongue_bitterness_reduced_by→ compound-class-cyclodextrins範囲: 層: 溶液。α-Astree II電子舌(電位差センサー7種)によるPCA解析。カフェインを苦味方向の標準として使用。著者らは電子舌データからは苦味の定量的評価はできないと断っている。
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compound-marrubiin —can_be_debittered_by→ compound-class-cyclodextrins加工・調理でどう変わる(2)
範囲: インドの1研究における 0.25-2% β-シクロデキストリン添加ゴーヤジュース
注記: 報告値は快楽的な受容性であって苦味強度評定ではない。抄録に苦味強度の値はない。
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ingredient-bitter-gourd —has_sensory_acceptability_increased_by→ compound-class-cyclodextrins範囲: 経口医薬品製剤。シクロデキストリンと味マスキングに関する PubMed・Web of Science・Scopus・Cochrane Library 収載文献の2023年系統的レビュー
注記: 同レビューは明確な成功例(フルオキセチン/β-CD、カプトプリル/β-CD)と明確な失敗例(スピロノラクトン/HP-β-CD、セチリジン/γ-CD)の双方を報告する。個々の一次研究はここでは読んでおらず、エビデンス水準は同レビュー自身の報告である。
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compound-class-cyclodextrins —can_reduce_perceived_bitterness_of→ "苦味を呈する原薬。味蕾に達する遊離薬物濃度を下げるホスト-ゲスト包接複合体化による。効果はシクロデキストリンの種類と薬物:CD モル比に依存し、すべての薬物で得られるわけではない"