研究ノート 038 — 2026-09-04
春の皿には苦味を盛れ——言い回しと山菜の実際
「春の皿には苦味を盛れ」という一文は、食文化・健康系のウェブメディアで繰り返し紹介される言い回しです。その出どころを辿ると、引用元は一様ではなく、同じ一句でも語尾の表記が資料によって揺れています。一方、この言い回しが指す食材——ふきのとう、菜の花、わらび、ぜんまい、こごみ、うど、たけのこ——には、それぞれ別の資料に記録された、苦味の成分やあく抜きの実際があります。このノートは、言い回しの来歴と、山菜の苦味の実際を、別の問いとして並べて読みます。
このページの内容(8 節)
この頁でわかること
- 「春の皿には苦味を盛れ」という言い回しの出どころは、明治期の養生書に帰す説明が広く紹介されているが、その一節が原本に実在するかどうかまでは確認されていない。
- ふきのとうの主要な苦味成分は、風乾した試料から単離された一つの化合物として一つの研究で報告されている。
- 菜の花・わらび・ぜんまい・こごみ・うど・たけのこには、それぞれ別の資料に記録されたあく抜きの手順があるが、その手順が苦味をどれだけ減らすかを定量した資料は、ここでは確かめられていない。
- たけのこの苦味に関わる化学物質は、地上に伸び日光にさらされる段階でタンニン含量と相関することが一つの研究で示されている。
「春の皿には苦味を盛れ」を遡る
複数の食文化・健康系ウェブメディアが、「春の皿には苦味を盛れ」ということわざを聞いたことがある人は多いのではないか、という調子でこの言い回しを紹介しています。
範囲: 日本語ウェブメディア(食文化・健康コラム)
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concept-spring-bitter-plate-saying —is_presented_as→ "春には苦い食材(主に山菜・春野菜)を食べようという趣旨の「ことわざ」として、複数の食文化・健康系ウェブメディアで繰り返し紹介される言い回し"その多くは、出どころを明治期の医師・薬剤師である石塚左玄の著書『食物養生法』(1898年刊)に求め、「春苦味、夏は酢の物、秋辛味、冬は油と合点して食え」という一節を引きます。ただし引用先によって、冬の語が「油」だったり「脂肪」だったりと表記が揺れ、原本のページ番号まではどのメディアも示していません。書誌情報を調べたレファレンス回答も、『食物養生法』が明治31年(1898年)刊・博文館・211ページという体裁を持つことは確認しますが、この一節が実際に本文に含まれるかどうかまでは確認していません。同じ見出し語を使いながら、本文には石塚左玄への言及がなく「主に春野菜を指す」という説明だけを載せる記事もあり、帰属の説明はメディアごとに一様ではありません。
範囲: 石塚左玄『食物養生法』(1898年)への帰属説
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concept-spring-bitter-plate-saying —has_historical_origin_narrative→ "明治期の医師・薬剤師である石塚左玄の著書『食物養生法』(1898年刊)の一節「春苦味、夏は酢の物、秋辛味、冬は油(資料により「脂肪」)と合点して食え」に由来すると、複数の食文化・健康系ウェブメディアや福井市公式サイトで説明されている"この言い回しにより近い実物として、石塚左玄が詠み莵道春千代(木花園)が俗解を付した歌集『食養道歌俗解』上巻(食養新聞社、1906年)第45コマには、「春苦味」という語句が引用符付きで示され、同じ段落に「夏は酢のもの」「秋辛味」の語、季節と食養を結ぶ一首への俗解が確認できます。ただし、冬に配される一語(「油」か「脂肪」か)を含む具体的な一文は、高解像度の画像でも確定的には読み取れませんでした。
範囲: 食養道歌俗解 上巻、第45コマ(国立国会図書館デジタルコレクション pid 836944)
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concept-spring-bitter-plate-saying —is_documented_in→ "石塚左玄が詠み莵道春千代(木花園)が俗解を付した歌集『食養道歌俗解』上巻(食養新聞社、1906年)第45コマに、季節と食養を結びつける一首が収められている。俗解文は当該歌の一句を『春苦味』と引用符付きで示し、続けて『夏は酢のもの』『秋辛味』の語、および『合点して食へ』に相当する句を用いて歌の趣旨を説明している。"この言い回しは、五行説の五味・五季対応表とは別の系統です。ある薬膳系ページは五行説の枠組みで苦味を夏・心に対応させ、別の東洋医学系ページは「木」の系列で酸味を春に対応させています。苦味と春を結ぶのは「春の皿には苦味を盛れ」の側であって、五行色体表そのものではありません。
範囲: 五行説の五味・五季対応表との比較
注記: 「春の皿には苦味を盛れ」およびその由来とされる石塚左玄の一節は苦味を春に配するが、中国伝統医学に由来する五行説の五味・五季対応表では、苦味は夏・心(心臓)に配され、春には酸味・肝が配される。石塚左玄の食養説と古典的な五行説の対応関係は、少なくとも苦味の季節配置において一致しない。この研究所はこの一致・不一致の当否を判定せず、両者がそれぞれの資料でどう述べられているかのみを記録する。
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concept-spring-bitter-plate-saying —differs_from→ concept-gogyou-five-taste-season-tableこの言い回しを紹介する記事は、具体例としてふきのとう・たらの芽・うど・菜の花などの春の山菜・春野菜を挙げています。
範囲: 日本語ウェブメディア(食文化コラム)
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concept-spring-bitter-plate-saying —includes→ "この言い回しの具体例として、複数のウェブメディアがふきのとう・たらの芽・うど・菜の花などの春の山菜・春野菜を挙げる"季語になった苦味、日記に残った苦味
言い回しとは別の経路で、苦味は季語にもなっています。きごさい歳時記は、ふきのとうを初春の季語とし、特有の香気とほろ苦い風味が喜ばれると解説して、杉田久女の句「ほろ苦き恋の味なり蕗のたう」を収めます。
範囲: きごさい歳時記
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ingredient-fukinoto —has_cultural_role_of→ "俳句における初春の季語。子季語に「蕗の芽」「蕗の花」「蕗のしゆうとめ」を持ち、きごさい歳時記は「特有の香気とほろ苦い風味が喜ばれる」と解説する。例句に杉田久女「ほろ苦き恋の味なり蕗のたう」を収録する"たらの芽は仲春の季語で、同歳時記は「少し苦味のある若芽は春先の山菜の代表的なもの」と解説し、一茶の句「たらの芽のとげだらけでも喰はれけり」(『八番日記』)を例句に収めます。
範囲: きごさい歳時記
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ingredient-taranome —has_cultural_role_of→ "俳句における仲春の季語。きごさい歳時記は「少し苦味のある若芽は春先の山菜の代表的なもの」と解説する。例句に一茶「たらの芽のとげだらけでも喰はれけり」(『八番日記』)を収録する"個人の記録にも、ふきの苦味を書き留めた例があります。種田山頭火は日記に「蕗のうまさ、ほろにがい味は何ともいへない。」と記し、別の日記では「蕗のほろにがさには日本的老心といつたやうな味がある。」とも書いています。標準化された官能パネルではなく、個人の主観的な味わいの記述です。
範囲: 種田山頭火の日記(青空文庫収録、書誌データは出典参照)
注記: 個人の日記における主観的な味覚描写であり、標準化された官能パネル試験ではない。苦味を『うまさ』の語と並べて肯定的に形容している点を記録。
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ingredient-fukinoto —has_sensory_attribute→ "『蕗のうまさ、ほろにがい味は何ともいへない。』(種田山頭火の日記の一節。同年の別の日記にも『蕗のほろにがさには日本的老心といつたやうな味がある。』という一節がある)と記される、ふき・ふきのとうの味わい。"ふきのとうの苦味とあく抜き
ふきのとうの苦味成分は、実験室でも辿られています。仙台周辺で採取した風乾ふきのとうから、東北薬科大学のグループが主要苦味成分として単離した白色結晶があり、当初ペタシノリドと呼ばれた後にバッケノリドBと改名されました。
範囲: 仙台周辺で採取され、東北薬科大学のグループが研究した風乾ふきのとう(1960年代-1972年)
注記: 著者が Petasinolide と命名後、欧州産フキ成分との名称重複を避け阿部・北原と合議して Bakkenolide-B に改名。納谷らの Fukinolide と同一物質。単一グループの解説記事に基づき、一次実験論文は未読。
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ingredient-fukinoto —has_principal_bitter_compound→ compound-bakkenolide-b同じ研究の過程では、熱水抽出物と希アルコール抽出物には苦味がほとんど移らないことも記されています。著者は当時有力だった苦味配糖体という見立てを離れ、有機溶媒抽出に切り替えたと記録されます。
範囲: 栗原(1972)が報告したふきのとうの抽出試験
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ingredient-fukinoto —has_bitterness_poorly_extracted_by→ "熱水抽出物と希アルコール抽出物には苦味がほとんど移行しない。著者は苦味配糖体仮説を放棄し有機溶媒抽出を用いた"台所での実際の下処理は、この実験とは別の記録に残ります。島根のふきのとう味噌のレシピは、塩と重曹を入れた湯で茹でた後、水にさらしてえぐみを抜いてから味噌に混ぜ込むと記します。
範囲: 農水省「うちの郷土料理」データベースの島根のふきのとう味噌レシピ
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ingredient-fukinoto —is_prepared_with→ process-aku-nuki農林水産省の公開情報は、こうした茹でこぼしや水さらしという伝統的なあく抜きが、ふき・ふきのとうのピロリジジンアルカロイド含量を大きく減らせるとも述べています。低減率の数値そのものはこのページにはありません。
範囲: ふきとふきのとう。食品中 PA 調査に基づく農水省の公開情報
注記: PA類が水に溶けやすい性質によると説明される。低減率の数値は情報ページには示されず、数値を載せた含有実態調査第2報プレスリリースは取得できなかった(403)。
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process-aku-nuki —reduces→ compound-pyrrolizidine-alkaloids島根と宮城の郷土料理記録は、いずれもふきのとうを親しまれた春の味覚、あるいは春の訪れを告げる山菜として紹介しています。これは文化的な位置づけの記録であり、官能や成分の主張ではありません。
範囲: 農水省「うちの郷土料理」の島根(ふきのとう味噌)と宮城(ばっけ味噌)の記録
注記: 公的データベース上の文化的位置づけの記録。安全性・健康効果の主張ではない。
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ingredient-fukinoto —is_presented_as→ "親しまれた春の味覚であり、春の訪れを告げる山菜"菜の花・わらび・ぜんまい・こごみ、それぞれの実際
菜の花の苦味は成分の側からも調べられています。日本市場のなばな(福島・香川で採取された試料)を対象にしたグルコシノレート組成の調査では、なばなは主要なグルコシノレートの含量が調査対象15野菜中で最も高く、脂肪族グルコシノレートが総量の大半を占めていました。
範囲: 日本市場のなばな(福島 2008年12月・2010年12月、香川 2011年2月)。脱硫 GSL の LC-MS 法
注記: 両GSLの含有量は調査した日本産アブラナ科15品目中で最大、総GSL量はブロッコリースプラウトに次ぐ。組成データであり、苦味との官能対応はこの論文では扱われない。
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ingredient-nanohana —contains→ compound-glucosinolates農林水産省の一般向け食文化記事は、その独特の苦味を料理のアクセントとして紹介しています。
範囲: 農林水産省 aff の一般向け食文化記事
注記: 官能試験ではない。
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ingredient-nanohana —has_cultural_role_of→ "独特の苦味を料理のアクセントとして味わう"わらびは、山形県の郷土料理記録では、あく抜きの後にたたき・おひたし・煮物・味噌汁などに用いられます。
範囲: 山形県のわらびに関する公的郷土料理記録
注記: 記録された調理慣行であり、あく抜きによる特定化合物または苦味の低減率は示さない。
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ingredient-warabi —is_prepared_with→ process-aku-nukiぜんまいは、高知県大豊町を含む山村の郷土料理記録では、茹でて乾燥させると長期保存がきく食材として記されています。
範囲: 高知県大豊町を含む山村のうちの郷土料理記録
注記: 公的記録の保存食に関する記述。乾燥条件や保存期間の定量値はない。
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ingredient-zenmai —is_preserved_by→ "茹でて乾燥させると長期保存がきく"こごみの呼び名には、資料内部での揺れも記録されています。富山県立山町の郷土料理記録は、本文では「くごみ。クサソテツの新芽の別称で、地域によってはこごみとも呼ばれている」と記す一方、同じページのレシピ注記では「富山県ではこごめ、こごみ」と呼ぶとしており、呼称の県帰属が本文と注記で一致していません。
範囲: 富山県立山町芦峅寺のうちの郷土料理記録
注記: 出典はクサソテツの新芽の別称として記す。学名の直接記載はない。本文とレシピ注記で呼称の帰属が一致しない点は原文どおり両論保持(2026-09-01 原文再確認)。
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ingredient-kogomi —has_local_name→ "資料本文は主材料を「くごみ」(クサソテツの新芽の別称)と呼び、地域によっては「こごみ」とも呼ばれると記す。同じ資料のレシピ注記は「富山県ではこごめ、こごみ」と呼ぶとしており、資料内で呼称の県帰属に揺れがある"うど・たけのこ、育て方と苦味の関係
うどの苦味・えぐみは、育て方と結びつけて語られます。東京都立川市などの商業栽培では、光の入らない地下の室(むろ)と呼ばれる穴ぐらでうどを育てる工程が記録されています。
範囲: 東京都立川市等の商業栽培
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ingredient-udo-tokyo —is_processed_by→ process-udo-muro-blanching大阪府茨木市千提寺に伝わる三島独活は、独活小屋に並べた根株の上にわらと干し草を重ね、発酵させた熱を利用して温度を保つという別の軟白方法で育てられます。茨木市公式ページは、一般的な軟白うどと比べて色が白い、アクが少ない、柔らかい、みずみずしい、甘い、という紹介文を載せていますが、これは測定値を伴わない紹介文であり、比較対象の「一般的な軟白うど」が何を指すかも本文には明記されていません。
範囲: 茨木市公式ページによる、標準的な室軟白ウドとの比較の言い伝え
注記: 測定値を伴わない産地側の紹介文の記述。『アク』は苦味そのものと同一視せず、原語のまま記録する。
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ingredient-udo-mishima —is_documented_as_having→ "『一般的な軟白うどと比べて、色が白い、アクが少ない、柔らかい、みずみずしい、甘いと言われている』(茨木市公式ページの記述、伝聞形)"たけのこの苦味も、育つ段階と結びつけて調べられています。浙江省農業科学院の研究は、地下で育つ黄化状態、地上に萌出した直後、地上5〜8cmまで伸びて日光にさらされる段階という三段階を対象にし、苦味に関わる複数の化学物質がタンニン含量と有意な正の相関を示したと報告しています。この研究の対象種は温帯のモウソウチクなどとは別の種であり、そこへの外挿はできません。
範囲: 浙江省農業科学院、先端部(約5cm)を対象とした3段階×3反復のトランスクリプトーム・メタボローム統合解析
注記: 絶対含量(mg/g等)の逐語データは今回の抽出範囲では確認できておらず、相関関係と定性的な増加傾向の記述にとどまる。ヒト官能評価は実施されていない。日本で一般的なモウソウチク(Phyllostachys edulis)とは属が異なる別種であり、直接の外挿はしない。
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ingredient-bamboo-shoot-bambusa-oldhamii —develops_bitterness_depending_on→ "地下で成長する段階(黄化状態)→地上に萌出した直後→地上5〜8cmまで伸びて日光にさらされる段階、という3段階の生育進行。苦味関連化学物質7種(Amygdalin、Apigenin、Arbutin、Salicin、Hypoxanthine、L-arginine、Solanidine)はタンニン含量と有意な正相関を示した。"台所での下処理は、たけのこでも記録されています。富山県のたけのこの味噌煮は、米ぬかと赤唐辛子を加えた湯で下ゆでし、ゆで汁に浸けたまま自然に冷ましてから皮をむいて輪切りにすると記されます。
範囲: 富山県のうちの郷土料理記録の作り方
注記: ふきのとうの重曹あく抜き(既存記録)とは異なる、米ぬか・赤唐辛子を用いる下ゆで方式。
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dish-takenoko-misoni-toyama —is_prepared_with→ process-aku-nuki分かっていないこと
- 「春の皿には苦味を盛れ」が『食物養生法』の本文に実在するかどうかは、この探索では確定できていません。複数のメディアが同じ一節を引きますが、いずれも原本のページ番号までは示さず、『食養道歌俗解』第45コマの画像でも冬の語一字は読み切れませんでした。
- この言い回しと五行説の五味・五季対応表の関係は、二つの資料を並べて「違う」と言える段階にとどまり、両者の史的なつながりの有無までは資料が語っていません。
- たらの芽・山うどは、東北農政局の地域作物一覧に「山菜」として列挙される記録が見つかりましたが、栽培・調理・苦味の実際まで踏み込む資料はこの研究所の資料にはまだ含まれていません。
よく問われること
「春の皿には苦味を盛れ」は本当にことわざとして辞典に載っているのか
食文化・健康系のウェブメディアはこの言い回しをことわざとして繰り返し紹介しているが、故事ことわざ辞典類での収録は今のところ確認できていない。多くの記事は出どころを明治期の『食物養生法』(1898年)に求め「春苦味、夏は酢の物、秋辛味、冬は油(または脂肪)と合点して食え」という一節を引くが、原本のページ番号を示す記事はなく、書誌を調べたレファレンス回答もこの一節が本文に実在するかまでは確認していない。関連する歌集の第45コマには「春苦味」という語句が引用符付きで確認できるが、冬に配される一語は高解像度の画像でも確定的には読み取れなかった。出どころは、今のところ一つに定まっていない。
ふきのとうの苦味は茹でこぼせば抜けるのか
風乾したふきのとうから苦味成分を取り出す実験では、熱水や薄いアルコールにはその成分がほとんど移らなかったと記録されている。一方、農林水産省の公開情報は、茹でこぼしや水にさらすといった伝統的な下処理によって、ふき・ふきのとうに含まれるピロリジジンアルカロイドの含量を大きく減らせるとしている。ただしこの二つは別の物質を指しており、苦味成分そのものが茹でこぼしでどれだけ減るかを数値で示した資料は、ここでは確認できていない。
関連する項目:ふきのとう /菜の花 /あく抜き /わらび /ぜんまい /こごみ /東京うど /三島独活 /たけのこ /春の皿には苦味を盛れ(言い回し)
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出典は出典台帳を参照してください。
この頁の引用のしかた
青木大(NIGAMI LAB)(2026). 春の皿には苦味を盛れ——言い回しと山菜の実際. https://nigamilab.com/notes/spring-bitter-plate/
主張ごとの固定リンクは各カードの #clm-… です。データは CC BY 4.0、配布は データを使う。 データセットの DOI: 10.5281/zenodo.22739101